連載:気まぐれゲーム雑記 第806回:みずほ銀行のコンテンツ産業調査におけるゲーム業界への冷静な分析

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正論すぎるし、大手メーカーがどこまで踏ん張るのか

調査結果が現実を見せつけてくれる

AZです。ゴールデンなウィーク中に書いた記事をツイッターにあげ忘れていたのが、最近後悔したことです。

それはさておきまして、2014年と若干古い資料ですが、みずほ銀行がコンテンツ産業調査をおこなった結果が話題になっております。なお、ゲーム部門については、112ページから144ページまでとなっており、非常に長文ですべてまとめても長文になるのは間違いないので、個人的ポイントをまとめて紹介します。それでも長くなりますけど……。

業界構造

  • 日本では、「スーパーマリオ」などのアクションや「ドラクエ」「FF」などのRPGが好まれ、欧米ではFPS、RTS、MMORPGが好まれる
  • その好みの違いは、ゲーム産業発展の違いに起因しており、米国ではコンシューマゲーム市場とPCゲーム市場が両立して発展した事に対し、日本はPCが普及せずPCゲームはニッチ市場になった
  • コンシューマゲームの日本、コンシューマゲームとPCオンラインゲームの米国といった状況は 1990年代中盤まで続いたが、コンシューマハードの設計がPC化したことで、PCゲームで培われた3Dグラフィック技術やオンライン技術等のコンシューマゲームへの転用が進んだ
  • ゲーム開発費は高騰を続け、広告宣伝にも多額の資金が投じられるようになり、ゲームビジネスはハイリスク・ハイリターンなビジネスになった
  • 上位にランクインするスマートフォンゲームは安定した売上を維持するが、多くは売上が小さく順位の入れ変わりも激しいし、新規参入の増加で競争が激化している
  • ゲームの参加経験率を見ると、約7割がコンシューマゲームで遊んでおらず、コンシューマゲーム離れが進んでいるものと見られる
  • 依然としてPCオンラインゲームはニッチ市場であるが、スマートフォンゲームユーザー率はコンシューマゲームに迫りつつある

国内事業者の動向

  • 日本では、据置型コンシューマゲーム市場が縮小を続けているが、対照的に世界市場では安定した需要があり、日本市場は特殊な市場になりつつある
  • 2000年以降の開発費の高騰と国内コンシューマゲーム市場の停滞により、ゲーム会社の業界再編が進んでいる
  • 出自の違う企業同士の再編が行われたことやコンシューマゲーム市場の対応策としてパチンコ機器開発やスポーツジム運営など事業の多角化を進めている
  • ゲーム会社は国内コンシューマゲーム市場の縮小や海外市場での苦戦を受け、モバイルゲームへ事業の中心を移しつつある
  • PlayStation4やXbox One等の次世代機の発売による市場活性化が期待されているが、多くの国内ゲーム会社は高騰する開発費や海外市場での苦戦から積極的なゲーム開発を行うことができていない
  • モバイルゲーム市場は、普段ゲームをしないライト層が中心であるため、国内外の新興ゲーム会社との競争が激しく、必ずしもコンシューマ分野で培ったブランド力が発揮されるとは限らない

海外事業者の動向

  • コンシューマハードの高機能化に伴うゲーム開発費高騰により、2000年初期に台頭していた米国有力ゲーム会社は倒産または大手資本の買収により姿を消している
  • コンシューマ、PC、スマートフォンの伸びが大きく、パッケージ販売後の定額課金や追加課金 DLC 等のインターネット配信を活用したビジネスモデルの構築が進んでいる
  • 欧米では、数多くのゲーム会社が再編され、現在は大手ゲーム会社数社に集約されている
  • どの欧米の大手も、全世界に開発・販売・マーケティング拠点を有する点、多額の開発費と広告宣伝費を投じてハイ クオリティなゲームを開発している点、追加 DLC 等の継続的な収益モデルの対応を強化している点が共通している

ゲーム産業の課題

  • モバイルゲーム業界の躍進に伴い、ゲーム産業全体では良好に推移しているように見えるが、ゲーム産業において重要なセクターであるコンシューマゲームでは、国内市場は縮小を続け、海外市場での日本のゲーム会社の競争力は低下している
  • 日本のゲーム産業の最大の課題は、「海外コンシューマゲーム市場における競争力の低下」
  • その要因は、「市場規模を反映した開発予算の違い」、「欧米市場との嗜好性の違い」に大別される
  • 2000年初期までのゲーム開発費は、1本当たり2~3億円、大型タイトルでも十数億円であり、日本のゲーム会社は国内市場の売上のみで開発費を回収し、利益を確保することができた上に、海外市場の競合が少なかったので日本製のゲームが海外でも売れたが、欧米ゲーム会社は欧米市場での販売を前提に大規模なゲーム開発予算を投入するようになり、クオリティやプロモーション面で優位になっている
  • 日本のゲーム会社は、制限された性能の中でアイデアやゲーム性が問われる携帯型コンシューマゲームやモバイルゲームに相応の強みがある一方で、AAAゲーム開発は、開発費の大きさに加え、FPSやRTS等の欧米市場で好まれるゲームジャンルの開発経験、ノウハウ、大規模な開発体制等が必要であり、超えるべきハードルが高い
  • 「欧米市場との嗜好性の違い」は、日本では、ゲームがコミックやアニメーションの影響を大きく受け発展した側面があり、ストーリー性、キャラクター性、ファンタジー性が高い JRPG130やアクション等のゲームジャンルに人気が集まる一方、欧米ではリアル性や没入感を重視したアクション、FPSやスポーツゲーム系のゲームジャンルが人気
  • 特に欧米市場で人気の高いゲームジャンルであるFPSは、国内でシェアが1%
  • 日本のゲーム会社は、日本向けのゲーム開発を行うと海外で売上が伸びないといった課題を抱えている
  • 日本は、携帯型コンシューマゲーム中心の市場であるのに対し、欧米は、据置型コンシューマゲーム中心の市場
  • 日本のゲーム会社は、ハードの高機能化に伴う開発費の高騰に伴い、安定したシリーズ作品への傾倒、低予算の携帯型コンシューマゲーム・モバイルゲーム開発に移行
  • こうした状況は、日本のゲーム会社のゲーム開発力の低下、海外輸出の減少、コンシューマゲームユーザー離れによる国内市場のさらなる縮小を引き起こす可能性がある
  • モバイルゲーム市場は、海外製ゲームの大量流入や高品質・低価格ゲームの登場によるさらなる競争激化が予想され、今後も日本のゲーム会社が国内のシェアを維持できるかは不透明
  • ゲーム会社は、コンシューマゲーム分野における最先端のゲーム開発への投資を続け、ゲーム開発の技術やスキル向上に努めることが重要

ゲーム産業の今後の方向性について

  • 継続的に最先端技術を用いた質の高いゲームを作り続けるしかない
  • 企業規模拡大を目的とした国内ゲーム会社のさらなる再編が有効
  • 日本のゲーム会社は、ゲーム開発費が高騰する中、最新のゲーム開発技術習得の人材育成や研究開発費に投資を回しにくい状況
  • ゲーム会社の負担軽減のために、社外教育機関の充実や人材育成費用の支援制度等も重要な施策
  • 日本が欧米諸国にゲーム産業で追い抜かれた今こそ、政府による産業育成を目的とした支援施策が必要

[引用元:みずほ銀行(PDF)]

非常に長いですが、ゲーム業界の歴史をざっくりと振り返りながら、今の日本のゲーム業界が抱えている問題を指摘している良い資料です。興味がある人は一読してみると良いでしょう。

問題点は数多くありますが、銀行でさえ「日本市場は特殊な市場になりつつある」と見ているところは重要な話でしょう。元よりガラパゴスやら何やら言われておりましたが、PS4の盛りあがり一つをみても海外とは明らかに違った市場を形成しています。また、大手メーカーもそれらに対応するため社内で再編をおこなっていますし、今後どういった方向へ進むのかが一番気になるところとも言えます。

また、さりげなく日本のPCゲーム市場についても語られているのは印象的です。海外はPCゲーム市場とコンシューマが両立し、日本は家庭用機のみだったことが開発力に差がついたというニュアンスにも取れますし、それがすべてとは言いませんが、ある程度影響あるのも違いないように感じています。だからといって、日本の大手メーカーがすぐ変わるとも思えませんし、むしろモバイルへ傾倒しているので、今後どういった動きになるのかは何とも言いがたいところはありますが。

コンシューマの主戦場が海外になってから何かと厳しい物言いが付く日本市場ではありますが、それが今置かれている現状だという事でしょう。いちゲーム好きとしましては、大手のみならずインディーな方々も色んなゲームが賑わっていく事をただただ願いたい限りですね。

連載:気まぐれゲーム雑記 第806回:みずほ銀行のコンテンツ産業調査におけるゲーム業界への冷静な分析に関するしょぼーんさんとしゃきーんさんのゲーム座談会

しょぼーんさん:なにやら、みずほ銀行の調査結果が話題になっとるよーってなお話です。

しゃきーんさん:ちょっと前の資料なんだな。

しょぼーんさん:そうみたいだねぇ。日本が置かれている現状ってのを見てみるにゃ丁度いいんじゃない? 違和感を強く感じるような事もないし。……どのメーカーも、本当に頑張って欲しいなぁ……。

しゃきーんさん:レベルファイブみたいに、日本だからこそできるゲームってのもあるしな。日本らしさを残しつつ、海外市場にもアピールするメーカーが今度どの程度出てくるか、楽しみにしたいものだ。

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