連載:気まぐれゲーム雑記 第110回:中古ゲームが排除されたら? と言う話題
気まぐれゲーム雑記
第110回「中古ゲームが排除されたら? と言う話題」
経済的なお話になるわけで……。退屈にならないアプローチで頑張るのです。
経済市場に中古市場有り
ゲーム市場に限りませんが、どこの市場にもだいたいは中古市場が存在します。
例えば、新古書店(比較的新しい本を売る古本屋さんのこと)で最大手のブックオフがそれに当たるでしょう。同様に、車、PC、家電、家具、古着などなど数えればキリがないくらい中古市場は存在します。
これら中古市場は、良い面と悪い面両方を持ち合わせています。
良い面は
- ユーザーに正規価格(いわば定価)よりも安い価格で提供できる
- お店の利益になる事
の2つ。
一方、悪い面は
- 販売元(本なら出版社、ゲームならパブリッシャーや時に開発元も含む)にお金が入らない
- 販売元には良いように思われてない
の2つ。
まぁ、両方ともこまごまとした事なら他にもありましょうが、大体はこんな程度で認識は大丈夫かと思います。
さて、このたびソニーが中古ゲーム排除とも取れるような特許を習得したそうです。詳しくはこちら。
内容をさくっとまとめちゃいますと、次の通りです。
- ソニーが日本で特許を取った
- ゲームディスクにプレイの履歴を残し、ゲームディスクをひとつのゲーム機でしか遊べないようにすることができる技術
- 技術によってオンラインゲームのパスワードは不要になる
- オンラインパスは一人につき1回しか使用できなくなるかもしれない
- PS3時も同じような噂が出たけど、結局実装には至らなかった
- 米SCEのCEOを務めるJack Tretton氏は「中古ゲームの規制には全く反対だ」と発言している
- 日本とアメリカでは考えが違う可能性もある
ざっとこんな感じでしょうか。
というわけで今日は、ソニーが次世代機に中古ゲームを排除するような動きに出るのかどうかはまったくわからないと結論付けながらも、昔中古ゲームを排除しようとした結果どうなったのか? という話をしていこうかと思う次第なわけです。
中古ゲームソフト裁判はターニングポイントだった
中古に関しては色々あれど中古ゲームに関しては、1998年にのちの中古ゲームソフト裁判と言われるようになる裁判が起こりました。この時の対立構図は2箇所で起き、大阪ではソニー、カプコン、スクウェア、ナムコ、コナミ、セガのゲームメーカー連合軍vsアクト(お店名で言うとわんぱくこぞう)、東京ではエニックスvsテレビゲームソフトウェア流通協会となりました。
まぁそれ以前に、ソニーがプレイステーション(初代PSの事)で小売店に対しアレコレがあって独占禁止法違反容疑がかかっていた(後に独占禁止法違反と認定されたけど、時代はPS2になっていたので大きな問題にならなかった)とか、そんな状況を支援するためにコーエー、カプコン、コナミが中古販売禁止の仮処分を求めたとか、でも小売店連合の反発を受けて仮処分は取り下げられちゃって、その結果CESAとかが余計態度を硬化させちゃったため、対抗すべくできた小売店の団体が「テレビゲームソフトウェア流通協会」で、CESAとかの団体は「中古撲滅キャンペーン」と称して中古商法を悪と見なしたりとか、そりゃもうメーカーvs小売店の構図が何ともカオスで業界関係者達は誰しもがてんやわんやの大騒ぎな時代だったりするわけですが、そういった話は今回ちょっと脇に置いときまして。
その裁判の結果は最終的に最高裁判所までもつれ込み、2002年に出ました。その時の結果は、基本的に「テレビゲームソフトウェア流通協会」の勝利。つまり、中古売買が認められる形となります。
で、この裁判で重要な事は3つ。
- テレビゲームは映画と同じく著作物である
- ソフトハウスなどゲームの著作者は、テレビゲームに関する頒布権を持つ
- 一度適法に販売されたものであれば、その時点で頒布権は消尽する
この時の1番目の決定が、今のゲームプレイ動画に影響している部分でもあるわけですが、それも脇に置いときまして。
もうちょっとわかりやすく一言でまとめちゃうと、テレビゲームは著作物だから著作権は開発元だったり販売元が所持しているけど、一度お店が売ったゲームについては個人がどのように売買しようと自由である、というものです。これは、消費者側の立場にかなり近い結果とも言えます。
この裁判は中古ゲーム市場を司法が認めるというモノで、非常に意義があるものでした。それと同時に、ゲームメーカーは新作を売る難しさに直面していくことになります。
ファミコン時代からみればゲームの単価が下がっている中、ゲームマシンスペックは向上していくわけですし、それに伴い開発費も高騰していきました。で、ユーザーが違うモノへシフトしているんだか、単に飽きられているんだかはわかりませんが、購入する人そのものが減っている現状においては、売れるモノを作るという課題そのものが非常に高いハードルとなっていくわけです。次世代機となれば、尚のことハードルが高くなるでしょう。
中古がなくなったら?
PS3時も、同じように中古排除的な特許を取りつつも、実装されることなく終わった事を考えると、次世代ハードで中古排除をやるもやらないも半々といったところでしょうか。
どのようにユーザーに対して囲い込みをするのかが焦点にもなりましょう。
ですが最も根本的なところとして、オンラインゲームならいざ知らず、通常のオフラインゲームでも中古市場を排除するような動きになれば、新作ソフトをよほど安い価格で提供しなければ広い売上を見込むのは難しくなるかもしれません。しかし、最近のソニーはPSNやクラウドゲーミングに力を入れていますから、以前の裁判の時よりは「小売りに頼らない販売方法」を構築していっているのは間違いない事でしょう。任天堂も、オンラインビジネスに注力するということは、最終的にはそうなる可能性が高いです。
中古ゲーム問題というのは、販売元や開発元と、小売り、それにゲームをプレイするユーザーのバランスがどこに取られるべきか、という問題にもなります。販売元や開発元にウェイトが置かれた結果、ソフトの価格が固定化され、ユーザーが減少しても本末転倒ですし、小売りにウェイトが置かれた結果、新作が極端に売れなくなっても困ります。
果たして、どこでバランスの折り合いを付けるつもりなのか……。今後も見逃せそうにない話題なだけに、しっかりと把握していきたいですね。
しょぼーんさんとしゃきーんさんのゲーム座談会
:何やらPS系次世代機に中古排除機能が付く可能性があるらしいぜ! みたいな記事があったので、便乗しました。
:なんつーか、昔は凄かったんだな……。
:あの頃の中古市場は、中古は悪! って切り捨てる感じだったからねぇ。わたくしのようなゲーマーは、新作を購入してさっさとプレイしちゃうけど、色々あってゲーマー辞めちゃったけどたまにするよ! って人はそうもいかないだろうし。……世の中どうなるか、わかったもんじゃありませんな!
:まぁ、ゲームを出す側も企業だし儲けなきゃいけないってのはわかるんだがなぁ。買うのはユーザーなわけで、買わなければ赤字なわけで、でも中古は開発とかにお金が入らないわけで、でも中古が売れないと小売りが……以下エンドレスってな複雑さだ。なんつーか……八方塞がりだな。
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