レビュー「Shadow Tactics: Blades of the Shogun」:試行錯誤が最高に楽しいタクティカル要素満載な難易度高めのステルスゲーム

Shadow Tactics: Blades of the Shogun

試行錯誤するのは最高です

海外産でも日本を理解しようと頑張った! ……気がする?

日本を模した、もしくはそれっぽい世界観の、海外産のゲームってあるじゃないですか。アレ、毎度疑問なのですが、何故に「中華やアジアンなエッセンスが混じっちゃう」のだろうと思うわけでして。いや、別に腹が立つとか嫌味とかそういうわけじゃなくて、どうしてそうなっちゃうのかな? と。海外の人からするとなかなか理解が難しいところなのかもしれませんが、どなた様か海外のデベロッパー様に聞く機会があったらぜひ聞いて見て下さい。なお、わたくしが本作に一番興味を持った理由は、「公開された動画内に、江戸時代を舞台にしたゲームだという触れ込みにもかかわらず“ラーメン”と書かれた提灯があったから」です。

Shadow Tactics: Blades of the Shogun

見づらいかもしれないけど見えて欲しいラーメンの文字

というわけで、本日皆様にご紹介するのは、「Shadow Tactics Blades of the Shogun」です。作品の雰囲気はトレーラーを見ていただくとして、早速中身を紹介していきましょう。

ストーリーにつきましては、世の太平を成した将軍こと“上様”ですが、何故か“カゲサマ”なる敵に狙われる事となり、侍で忠臣のムゲンや忍者のハヤト、鉄砲爺ことタクマ、孤児っぽい罠師のユキ、変装が得意な忍者アイコという合計五人が、色んな思惑がありながらも上様を守るついでに野望を打ち砕こうと対峙していく、というモノです。それだけ聞くと、まるでどこかの特撮的なノリのように思われかねませんが、ストーリーや雰囲気は至ってマトモなのでご安心下さい。ただし、敵を含めた一部の重要キャラクター達の名前が「カゲサマ」や「ヤブ大名」「オッコト大将」「ノボル」「マサル」など、江戸時代にそぐわない雰囲気のネーミングセンス溢れたモノになっており、とあるステージでは敵の動向を話し合っているはずなのに「カゲサマはどうしているのだろう?」と、まるで敵の心配をしてしまうかのような台詞になっていた事をご報告させていただきます。

Shadow Tactics: Blades of the Shogun

オッコト大将のネーミングセンスが光りすぎて眩しい

また、本作はドイツのデベロッパー「Mimimi Productions」が手がけておりますが、江戸時代をモチーフにしている事だけをインプットしてプレイしてしまうと、やはり「日本という名の中華やアジアンテイストが混ざった何か」な世界観になっています。しかして、ストーリー上で何度か“辞世の句”が出てきたりして、恐らく「Mimimi Productions」は大まじめに日本を自分たちなりに解釈して再現しようと頑張った事もしっかり垣間見えてくるわけです。そういう意味では、賞賛したい気分にもさせてくれます。ただし、何かにつけてすぐ切腹していく人達は、流石に「それはちょっと違うんじゃ……?」とも思ってしまいました……。

Shadow Tactics: Blades of the Shogun

失態をして、自主的に切腹です

本作のポイントは、海外で作られたゲームだというのに「日本語吹き替え」が存在しており、それがなかなかの出来映えだという事です。作品の雰囲気を損なわないよう、明記されている日本語文字とは違った台詞を吐く時があったりするのですが、それがちょっとしたB級映画を見ているかのような独特な空気を醸し出していて、実に好感が持てる仕上がりでした。本作の日本語声優さんにおかれましては、どういった指示があったのか、どんな苦労があったのかなどをインタビューしてみたい気持ちにさせてくれます。なお、日本語字幕や翻訳につきましては、ところどころ微妙な違和感があります(キャラクター達は“将軍”の漢字で上様としゃべるが、たまに“上様”の文字になっていたりと文字情報だけでは混同しかねない)けど、吹き替えのおかげでそこまで問題はありません。

“セーブとロードが基本”でスキルを駆使しないとクリアできないハードコアな難易度

では、ゲームシステムを見ていきましょう。

本作は、クォータービュー(いわゆる見下ろし型)の1マップを使ったステージクリア型ステルスゲームです。また、難易度は、「イージー」「ノーマル」「ハード」の3つから選ぶ事が可能ですが、「ノーマル」でも十分難易度が高く感じられました。なお、「イージー」ではバッチ(ステージごとに用意された実績みたいなモノ)の取得ができません。

基本は、そのステージで使える複数のキャラクターが1マップにいますが、キーボードとマウスの場合はそれぞれをある程度一斉にRTSライクで、コントローラの場合は一人ずつ操作しながら目的を達成する事になります。当然ですが、どこか敵に見つかりそうなところでキャラクターを放置したまま別のキャラクターを操作していたら、放置された方はあっさり見つかって殺されゲームオーバーです。きちんと隠れながら、それぞれキャラクターが持つ固有のスキルを駆使してステージのクリアを目指します。

Shadow Tactics: Blades of the Shogun

家に潜伏中が1人、中央草むらに1人、右下草むらに1人

各キャラクターは、ステージごとに使えるスキルが違っていますが、序盤を過ぎればだいたい平均して3~5個くらいのスキルを所持しています。すべて紹介するととてつもなく長くなってしまうので省略しますが、それらの能力を駆使しないとクリアできない難易度になっておりますので、行き詰まりそうになったら各キャラクターの能力を思い出して下さい。終盤は「ごく僅かな時間だけど視界を奪う」ようなスキルを連続で使う、なんてシチュエーションに出会うかもしれません。なお、各キャラクターに成長要素はなく、一部のキャラクターは各ステージごとに能力を使うための必要なアイテムを入手することになります。

Shadow Tactics: Blades of the Shogun

タクマのスキルの一つ、たぬきだけど名前はクマ

で、ここからが本番なわけですが、このゲームはクォータービューなので画面こそRTSライクやハクスラのように見えますし、実際マウスとキーボード操作はRTSのソレですが、本質はステルスゲームなので「見つからない」様に動く必要があります。ですので、ある程度直感的に動けるコントローラでのプレイも視野に入れておいた方がいいかもしれません。で、このゲームの難易度を押し上げているのは、「見つかった時のデメリットが大きすぎる」からです。見つかった場合、敵が1人なら多少のダメージを犠牲に倒す事も可能ですが、その間にまわりの敵を呼ばれてしまった場合、増援も沸いてくるという仕様です。見つかってしまった場合、ダメージを負ってまでして倒した甲斐はさほどありません。

そもそも、見つかって周りの仲間を呼ばれた場合は、ほぼ死亡が確定します。しかも、死体を放置しておくとソレを発見されただけで増援を呼ばれるような始末なので、しっかり処理の事まで考えた上で、更に極力見つからないでクリアするのが前提になります。ただし、見つかるまでは1秒満たない程度の時間(距離によって違う)もあるので、そういったところを上手く縫いながら、サクッと片付けたりやり過ごしたりして目的達成を目指します。……まぁ、「概ね倒していかないと結構厳しいシチュエーションが多い」ですが。

Shadow Tactics: Blades of the Shogun

一度みつかると四方八方からボコられます

さらに、ある種パズル的とも言えましょうか。「Aの敵を倒すにはBの敵の視界が入っているのでBを倒さなければならず、Bを倒すには更に視界が被っているCを……。」とかなり連鎖します。後半になればなるほど、この連鎖のようなモノが増えていきます。よって、どの敵から倒すのかは「相当な回数の試行錯誤」をする必要があるでしょう。それはもう恐ろしいほどやり直す事になるとは思いますが、どうぞ安心して下さい。ゲーム中のクイックセーブは凄く早いし、「ステージが始めれば」ロードも早いです。そう、「ステージが始まれば」です。そのことについては、後でご紹介します。

Shadow Tactics: Blades of the Shogun

大元を絶つか、倒せるところから倒していくか

なお、本作は任意のタイミングでクイックセーブする事が可能ですが、設定していないとかなりグイグイと「セーブした方が良いよ?」的なサインを出してきます。実際、「確かにセーブした方が良い」と言える難易度で、先も書いた通りゲーム中のクイックセーブとロードは快適なので特定のバッチ(各ステージに用意された実績みたいなモノ)を狙う意図がない限りは駆使した方が良いでしょう。プレイヤーに与えられた特権です。ただし、クイックセーブ枠は3個までとなっており、3個以上セーブすると古いモノから消えていくので、下手なタイミングでセーブを乱発すると詰んでしまう可能性もあるだけに、多少は注意しておくといいかもしれません。重要なポイントだと思ったら、通常のセーブを使うのをオススメしておきます。

Shadow Tactics: Blades of the Shogun

最後に(クイック)セーブしてから何分経過したか

連携を決められるタクティカルなShadowモード

本作の特徴的なシステムとして、Shadowモードという特殊な操作があります。先ほど、このゲームの基本は各キャラクターを「1人ずつ操作する事」だと書きましたが、Shadowモードは「各キャラクターに1個だけ指示を出しておいて、ゴーサインは任意のタイミングで出す」というモノです。

これがある事で、不可能な事を可能にする事ができます。例えば、敵の侍はプレイヤー側の同じ侍であるムゲン以外、倒す事ができません。ですが、ムゲンがいないシチュエーションというのも多々あり、そういった場合は強引に倒す方法として、鉄砲で攻撃すると一定時間弱った状態になるのでその間に近接でトドメをさす、という事が可能です。それをShadowモードでやろうとすると、あくまでも一例ですが「鉄砲爺ことタクマの遠距離鉄砲で射撃するよう設定し、うずくまっているところを背後から始末する」という流れを作る事ができます。

Shadow Tactics: Blades of the Shogun

屋根の上とロープの上から強襲しようとしています

このモードは、序盤だと使い勝手に慣れないかもしれませんが、後半はこのシステムに頼るケースが多くなるでしょう。特に、「倒せない(死体を発見されたら騒がれるから)けど、どうにかして通過しないといけない」ようなシチュエーションでは、「視界を奪う」スキルや「呼び寄せる」スキル、「注目させる」スキルなどを組み込むと案外上手く通れる時があるので、試してみると良いかもしれません。そういったところが、このゲームが「タクティカル」なゲームである事をしっかりと認識させてくれます。

難点は?

基本は凄く良いゲームですが、唯一と言って良いほどの難点は、「ステージ開始時のロードがかなり長い」という事でしょう。ロード画面に、“最大1分”なんて出ておりますが、1分どころじゃないくらいには待たされます。先も書いた通り、「ステージ中のロードは早い」ので安心して欲しいところですが、ステージ開始時のロードはとにかく長い。一応、PCスペックの推奨要件をそこそこ上回っているのにロード時間が長い、という事を添えておきます。

ですが、初見では各ステージにかなりのプレイ時間を費やす事になりました。序盤のステージならともかく、中盤以降は初見なら1ステージに1時間以上かかる事もありましたし、終盤は2時間以上かかったところもそれなりにあります。画像撮影やら何やらで多少やり直ししたので詳しい時間はわかりませんが、すべてのステージを難易度「ノーマル」でクリアするまでには、20時間以上を費やしました。ステージ開始時のロードが「長い」のは確定的に明らかですが、そんなに多発するロードではないという事と、一度ステージが始まれば初見だと結構プレイ時間も長いという事を考慮しつつ、どこで折り合いを付けるのかというのは個人のさじ加減にもよるので、ロードが気になる人はdemo版をやってみる事をオススメします。

Shadow Tactics: Blades of the Shogun

1分以上はかかります

総評:“コレジャナイ”日本感もあるのは確かだけど、ハードコアなタクティカルステルスゲームとしての出来はかなり良し

海外で作られた「日本」をテーマにしたゲームの場合、大体“コレジャナイ”感が出てしまうのも否定できないところですが、本作は“それでも頑張った”といわんばかりの何かが垣間見える、ちょっと珍しいゲームでした。特にストーリーについては、一部のキャラクター達の名前がアレで思わず笑ってしまいそうにもなりますが、全体的には「時代劇」や「侍」「江戸時代の日本」たるモノを海外なりに再現できており、ある意味感心させられるところはあります。また、ゲーム内容についても、難易度もかなりハードコアながらにどうやって攻略してやろうか、という“やる気にさせる”のが上手いモノにも感じられました。

Shadow Tactics: Blades of the Shogun

上様との会話、圧倒的“コレジャナイ”感

ボリュームに関しては、全13ステージながらも1ステージにかかる時間は初見だとかなり時間を使うのは間違いないでしょう。序盤ではそんなに時間がかからなかったとしても、後半戦になれば初見だと結構苦労させられます。また、一度クリアしてしまってもバッチという名の実績集めなど、やり込み要素もちゃんと存在しています。どのステージも基本的に最低でも二人以上で挑む事になるので、攻略の答えが一つではない、というのも良い点です。

なお、先にもちらっと書きましたが、本作はキーボードとマウス操作以外にもコントローラ操作に対応しています。画面が見下ろし型ということで画像を見ただけではRTSっぽさも感じられるでしょうが、アクション要素も多少は求められるところに直面する可能性は否定できないので、問題がなければコントローラでプレイするのもアリです。ちなみに、私は最初からコントローラでやり続けて無事にクリアできました。

Steamでインディーゲームなどが話題になっている中だと少々割高な印象を受けるかもしれませんが、ステルスアクション好きや、2.5Dの見下ろし型のステルス要素を持ったRTSに興味がある人、さらには高難易度で手応えがあるステルスゲームがやってみたいという人達にはオススメできます。ちょっとだけでも気になったという人は、Steamのデモ版をやってみるのが一番でしょう。あの体験版は、製品版を買えば自動でセーブデータを引き継いでくれるので、安心してプレイしてみてください。試行錯誤という名のセーブとロードを繰り返した果てに見えてくるクリアというのは中々に感動モノですので、高難易度でも問題ないくらいステルスゲーム好きな方は是非手を出してみて欲しい限りですね。

この記事を書いた人

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「独り善がりなゲームログ with 電漫堂」の管理人。かつて編プロに勤めていたけど、気づいたらWEB屋になってた。ハンドルネームは「アズ」と読むはずだけど、かつてとあるゲームで外人さんからボイスチャットで「Hey! AZ(エイジ)!」と呼ばれて以来、どう読むべきなのかをかれこれ10年以上悩んでる。

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