レビュー「Fallout 4」ゲームシステム編:素晴らしいくらい“前作”から拡張されたウェイストランド
探索して、襲撃して、モノを作って、世界を堪能する
前置き
「ゲームをするというのは、好きな人を攻略する事と同じだ」というのは以前“編プロ”に勤めていた際、某MOをやり過ぎて生命の危機に瀕した経験がある先輩がわたくしめに教授して下さった言です。モノの例えが非常にアレなわけですが、言い得て妙な話であながち間違いじゃないことに気づく人もいるのではないでしょうか。
一般的に、攻略というのは「最適な答え」が求められます。企業風に言えば、「金になる情報」といったところでしょうか。ですが、現実に存在する好きな人を攻略しようとしたら、そう簡単にはいかないわけでして。自分の好きなように、自分が思う最適な答えを自分なりに考えて、自分でそれをアウトプットして、好きな人の反応を待つのです。つまり、本来攻略というのは「自分の好き勝手に自分なりの最適(最短ではない)な答えを出す」というモノになります。
実のところ、攻略本なるモノはお金を払う代わりに「誰でもクリアできる情報or必要な情報」という価値を提供しているに過ぎません。どんな攻略があったって良いんです。どんな楽しみ方があったって良いんです。他人にとって価値があろうがなかろうが、本人にとっては楽しい攻略になるというモノだって存在します。
ということで、このレビューは「クリアする」事に価値を見出していないレビューです。あれです。“壮大な寄り道への誘い”です。その世界が楽しくて、メインなんかほったらかして寄り道して、世界を廻るのが楽しくて、その世界でひたすら何かをしているのが面白い。ただそれだけです。でも、ただそれだけで楽しいという事さえ伝われば、幸いだと思う今日この頃なのです。……ぶっちゃけ、自分の英語翻訳に一切合切自信がなくて、誤読があったら嫌すぎるという恐怖心からメインストーリーを導入以外進められなかった結果なんですけどネ。
メインストーリーを避けて行けるだけいったマップ
あ、ここまでが前置きです。
賞賛し続けたい世界があったFallout 4
さて、Fallout 4のレビューですが、今回はストーリーについての話題は余り触れません。クリアを目指して遊ぶのがゲームではありますが、本作の最大の魅力はメインストーリーも含めた、世界そのものを堪能するというところにあります。要するに先に結論付けてしまいますと、“Fallout 4”は「壮大な寄り道で世界を堪能するためのゲーム」です。という定義をしておいたところで、早速中身を見ていきましょう。あ、ストーリーには余り触れないと言いながらも、説明を明確にするため若干のネタバレは存在していますので、注意して下さい。
大いなる「自由度」
まず自由度について語る前に、どういった自由度があるのかを項目別に分けてしまいます。本作で考えられる「自由」は、ざっくりとわけて以下の4つ。
- ストーリーに対する自由(プレイヤーがストーリーに介入できるか否か)
- 操作キャラクターに対する自由(容姿からスキル・ステータスなど含め)
- オープンワールドで好きに探索できる自由(ストーリーの進行に関係なく行けるところはどこまでも行けるか否か)
- その世界で行動を制限しない自由(盗みや暗殺等々)
では、その4つがどのような感じになっているのかを明記していきましょう。
まず、ストーリーについては、前作「Fallout 3」の時と同じようにメインとなるモノにサブとなる形ですが、前作の“Vault101のアイツ”的な感じ(Fallout 3は主人公がどんな容姿にもなれるので、そんな風に呼ばれました)が出るかと言われたら、ちょっと気になるレベルです。具体的には、選択肢や声が入ったことでプレイヤーがイメージする“Vault111のアイツ”になれるかどうか、といったところでしょうか。ここは個人差が出そうな雰囲気があります。
また、操作するキャラクターに関しては、メインストーリーに付随した設定があるというのは前作と変わりませんが、結婚しているという事と子供を助けに行くという部分をどう判断するかで意見が分れそうな気はします。ですが、容姿は相変わらず自由にやれますし、ステータスやPerkについても「ゲームスタート時や序盤の最適解」というのはある程度あるかもしれませんが、基本的にはすべてレベルアップで上げる事が可能なので、心配しなくとも好きなようにやる事ができます。
一方、探索できる自由と、行動を制限しない自由も概ね健在です。例えば、探索の際にレイダーの拠点を見つけた時の感動といったらありゃしません。何を考えてるって、そりゃ「どんな物資あるかな?」とか、「レジェンダリー出てこないかな?」とか、「今回はどんな武器で駆逐しようかな?」とか、「レイダー仕様のパワーアーマーを盗もうかな?」などを考えてしまうわけです。レジェンダリー(※日本語だと“伝説の”)は「戦闘」の項目で、物資については「ハウジング」のところで今一度説明しますが、あらゆる物資を得るためにレイダーの拠点へレイダーの様に攻め入り物資をあさって我が拠点へと帰るゲームプレイは、もはやどっちがレイダーかわからない所業でございます。そうですね、言うならば「ヒャッハー!」な気分です。
レイダーを駆逐するんです
前作から少し変わった「戦闘」
そんなヒャッハーな気分で攻め入る事になろう戦闘ですが、戦闘における本シリーズ最大の特徴はV.A.T.S.になります。V.A.T.S.を簡単に説明すると、V.A.T.S.を発動させることで戦闘中に敵をスローモーションにさせながら、敵の部位をターゲットして攻撃する事が可能になります。これがあるお陰で、RPGライクな戦闘が可能になるといっても過言ではありません。もっとも、V.A.T.S.の使用回数はアクションポイントを消費する形になっているので、連続での使用は制限がありますけど。
お馴染み「V.A.T.S.」中
前作からの違いといえば、まず前作では完全にストップしたV.A.T.S.が今作では「スロー」に変更されているという事。スローなので、攻撃モーション中の敵をストップさせるのは難しいです。ある程度、即決即断が迫られるところはありますが、前作の完全ストップより戦闘に臨場感が出て良いところには思えました。あと、爆弾系についてはV.A.T.S.で使えなくなりました。ただし、爆弾を投げた後「V.A.T.S.」を使って撃って破壊する事は可能です。また、Perkで投げ方も変化するので、違った遊び方ができるようになっています。あとついでに、敵は前作に比べると慣れないうちは強く感じるので注意しましょう。
他には追加された要素として、一部の敵は「レジェンダリー」の名が付いているモノが存在します。そのレジェンダリーな敵は、武器防具に特殊なステータスが付いているモノを落とすので、若干のハクスラ的要素を持ったと言っても良いでしょう。レジェンダリーがいるだけでテンションが上がるというのは、そういうことです。
撃つと着弾先で爆発するライフル
手の込んだ「武器・防具の改造」
今回の武器・防具の改造は、かなり幅広くできます。武器改造のためにPerkは必要になりますが、習得すればちゃんと性能を上げる事ができます。バットでさえ、木からアルミへ変更しのこぎりの刃を付けるとか、わけのわからんモノに仕上げる事が可能です。
愛用のバット
そこで、先ほどのレジェンダリーな武具が合わさってくると、武器集めが更に加速します。それらの改造には、それぞれアイテムが必要になります。そのアイテムは、大抵どこかで拾えたり再利用したり何だったりと改造をするのに細かいモノまで使用可能になっているので、なれるまではあらかた色んなモノを持って拠点に帰る事になるのは、多くの人が通りそうな道かもしれません。まぁつまり、ステータスはある程度荷物を持てるような形にしつつ、Perkもそういったモノをとっておくと多少便利になる、とも言えます。
黙々と拠点作りの「ハウジング」
今作では、一部の拠点をある程度自分の好きなように作り替える事が可能です。メインクエストを進めていけばだいたいわかる感じにはなっていますが、そういった説明が出てくる前に拠点を作り替える事は可能なので、そこはなんともらしいフリーダムさと言うべきところでしょうか。どんなモノかわからない人向けに、ちょっと一連の流れを紹介します。
ハウジングを開始するには、Workshopから作る必要があります。逆を言えば、Workshopさえあればその周辺一帯はハウジング可能な場所だという事です。一番最初に行き着くであろう場所はいきなり作り替える事ができますが、それ以外は大抵レイダーを殲滅したり、クエストを受けて特定の敵を倒して来るなどのアクションが必要になります。それが終われば、いよいよハウジングです。
Workshopを調べて建築開始
ハウジングで作れるモノは、素材が必要になります。よって、まずは拠点の清掃をしましょう。清掃すれば、木材やアルミが手に入ります。すでに置かれている家具を再利用するのもアリですが、面倒な場合は概ねスクラップにしてもさほど問題はありません。一部、ステータスを上げる本が落ちてたりするので、注意はそれくらいでしょうか。また、先も書いた通り武器や防具などの素材として使える材料もハウジングで利用可能ですし、武器や防具そのものもスクラップにして材料にできます。他にも、落ちているゴミっぽいモノは大半が再利用可能です。つまり、どんどん溜めておけば良いという事になります。あと、溜めておいたモノは一部のPerkを取得する事で住人を他の拠点に出向かせて共有化する事ができます。拠点を充実させたい人は、Perkを取ってどんどん利用しましょう。
ガンガン綺麗にします
ですが、注意点もいくつかあります。まず、最初にあげておきたいのが「ファストトラベル」で飛んだ場所を含めて作り込むような事はしない方が良い、という点です。コンクリートの足場なんかを置いてたりすると、トラベルした際にキャラクターが埋もれます。重要なので今一度言っておきますけど、埋もれます。また、作れる範囲や置けるオブジェクトの数もある程度決まっているので、どの程度の大きさかは決めておきつつ作ると良いでしょう。最初のうちは、小さな小屋から作り始める事をオススメします。
何度も書くけど、埋もれます
ハウジングで重要なのが、住人です。もちろん、住人ゼロのまま自分のみが使える拠点として運用するのも問題ありません。ですが、やはり拠点として機能させた方が街として機能している感が出てきます。住人を来させるようにするには、食料と水、ベットと発電機とラジオビーコンが必要です。具体的には、食料はどこかで調達したモノを土に植えて住人を割り当てれば生産してくれるようになります。水はポンプを用意するなり、浄水場を作るなりすれば問題ありません。ベットはそのまま、材料さえあればすぐにでも作れますし自分で使う事も可能です。あとは、発電機を作りラジオビーコンとくっつけて電波を飛ばせば、ベットの数や食料などに見合った住人がやってくるようになります。
住人を呼び込むにはビーコンを起動させます
電波を発信し、住人がくるようになると次の問題として、敵が襲撃してくるようになります。どの方向から来るかは拠点ごとに違いますので上手く誘導するか、最初から全方位で考えるのが良いでしょう。襲撃されないようにしておくには、ディフェンスが上がるモノを置いておくのが無難ですが、襲撃頻度は食料+水よりもディフェンスが低い場合は多く発生するケースが見られますので、それを目安にすると良いかもしれません。
タレットを置いておきましょう
襲撃も安定するようになったら、ショップを作ったり他の拠点と交易させたり住人を拠点に送り込んだりして、どんどん拠点を充実させていくスタンスになります。先も書いた通り、なにもすべての拠点に住人を住まわせないといけないというわけではないので、そこは自身の好みで考えておきましょう。
総評:前作ファンおよびオープンワールド好きならやって損はない
不満点としては、我らが愛犬ことドッグミートが無敵(死なないだけで強いわけじゃないがPerk次第でどうにかなるかも)なので常に連れて行けるけど、ステルス系の攻め方をする人には「ドッグミートが見つかる→自分も見つかる」のコンボ炸裂で案外邪魔になるケースがあるとか、Bethesdaお馴染みの不具合があるとか、一度襲撃したレイダー等の拠点に敵が復活するまで結構時間がかかるなど細々したモノはありますが、システムだけを遊ぼうとしても「十分問題なく面白い」です。まさに、Falloutだと言わんばかりのゲーム内容になっています。
我らが愛犬
敵が空中で死んだままの状態
前作をプレイした人なら、「前作のゲームシステムからより良い形にし、更なる要素を多数盛り込んだ」と言えばだいたいわかるでしょう。ストーリーはさておいて、“Vault111のアイツ”としてウェイストランドを放浪できるのは間違いありません。ひたすらに、その「世界」そのものを楽しんでみて下さい。今作も荒廃した世界には色んな光景が各所においてあり、様々な事を考えさせてくれます。
三輪車と熊の人形、ボールを抱え込んでる骸骨
いよいよ日本語版が発売されようとしている本作ですが、どのような評価が並ぶ事になるのか、楽しみでなりません。オープンワールド好きなら手を出して損はしない代物ですし、より多くの人が本作の良さを体感して欲しい限りですね。
この記事を書いた人
:「Fallout 4」のレビューでございます。
:すげー楽しんだって事でOK?
:OKっす。そろそろ200時間超えるんじゃないかな。恐ろしいペースで建築やってた気がする。とる行動の一つ一つが時間を忘れるくらい没頭しておりましたよ。……なんだかんだと酔いましたけどネー。
:……酔い耐性のない人が酔ってでもやりたいゲーム、というオチで……。
レビュー編集お疲れ様でございました。
日本語版発売前の前夜祭として、ワクワクしながら拝見させて頂きました。
明日から、私も放浪の旅と洒落込むことにします。