連載:気まぐれゲーム雑記 第1015回:Ubisoft、かつて“アサシン クリード”シリーズのクリエイティブディレクターを勤めたPatrice Desilets氏のタイトル「1666: Amsterdam」の権利を返還

クリエイターと企業が争うのは実に切ない

次回作にも期待が集まる?

AZです。企業に属している人のツイッターのプロフィールに、「あくまで個人的なものです」的な一文が書かれているのをよく見るのですけど、それで済んだらツイッターが原因で解雇or降格or自粛処分される人はいないんじゃなかろうか? と思いますし、そもそも悪いことと思っていたら不要なツイートはしないのが普通ですので、結局はそういう事なのだろうなぁと思う今日この頃です。

それはさておき、Ubisoftは、かつてアサシンクリードシリーズのクリエイティブディレクターを勤めたPatrice Desilets氏のタイトル「1666: Amsterdam」の権利を返還する事を、Patrice Desilets氏のPanache Digital Gamesと共に共同発表しました。

Ubisoftがゲーム『1666: Amsterdam』の権利をPatrice Desilets氏に返還することで合意した。

『1666: Amsterdam』は、『Assassin’s Creed』シリーズでクリエイティブ・ディレクターを務めたPatrice Desilets氏が、THQの下で開発を進めていた大作ゲーム。2010年にUbisoftを離れたDesilets氏は、開発スタジオTHQモントリオールを率いて『1666: Amsterdam』の開発を進めていたが、その後THQが倒産。Ubisoftは2013年に『1666: Amsterdam』やDesilets氏ごとTHQモントリオールを買収していた。しかし、Ubisoftは時を置かずしてDesilets氏を解雇し、『1666: Amsterdam』の開発を凍結。Desilets氏は、『1666: Amsterdam』の権利の返還や賠償金を求めて訴訟を起こしていた。

今回の合意によって、Desilets氏は訴訟を取り下げている。

[引用元:Choke Point

ほんと、良かったですね。

分からない人にちょっと説明しますと、Patrice Desilets氏は「Splinter Cell」シリーズや「Prince of Persia」シリーズの開発にゲームデザイナーとして関与し、アサシン クリードシリーズの生みの親ともされている御仁で、“アサシン クリード ブラザーフッド” の発売前にUbisoftを退社。その後THQ Montrealスタジオのトップへ就任しますが、UbisoftはPatrice Desilets氏が業避止義務を破ったとしてTHQに雇用の取り下げを求め提訴します。その裁判は、最終的にはTHQが勝つわけですが、その後THQは倒産へと突き進むことになります。その際、THQ MontrealでPatrice Desilets氏が手がけていたモノが「1666: Amsterdam」となるわけです。

THQの倒産後、各スタジオやIPはオークションにかけられることになりますが、UbisoftはTHQ Montrealと「1666: Amsterdam」「Underdog」のIPを250万ドルで購入し、Patrice Desilets氏はその流れでUbisoftに復帰することになりました。しかし数ヶ月後、UbisoftはPatrice Desilets氏を解雇し、「1666: Amsterdam」の凍結を発表。Patrice Desilets氏は、Ufisoftに対し、IP購入の権利や解雇に絡む賠償を求めて提訴しており、それが今回和解になった、という事になります。何とも複雑な事情ですが、まずは無事IPが返還されたというのは喜ばしい事でしょう。

本件のようなDesilets氏とUbisoftの因縁めいた関係性は珍しい一件に間違いありませんが、こういった裁判や権利関連の話を見ていると、作品はクリエイターのモノなのか企業のモノなのか、という感情と理性がぶつかり合うような難しい問題が見え隠れしてきます。まぁもちろん、クリエイターと企業がうまくつきあっていければそれに越したことはないわけで、どちらも関係が破綻しないよう努力すべきところはあるのですが、必ずしも上手くいかないというのは、昨年起きたコナミと小島秀夫氏の問題をみれば想像も付きやすいところにはなりましょうか。

自身のプロジェクトながらに、THQ時代の遺産を手に入れた事となるPatrice Desilets氏ですが、やはりその動向は注目されるところになるでしょう。当面は自身のスタジオPanache Digital Gamesの処女作「Ancestors: The Humankind Odyssey」に注力するということですが、いつの日か「1666: Amsterdam」がお目見えするのを色んな意味で期待しておきたい限りですね。

連載:気まぐれゲーム雑記 第1015回:Ubisoft、かつて“アサシン クリード”シリーズのクリエイティブディレクターを勤めたPatrice Desilets氏のタイトル「1666: Amsterdam」の権利を返還に関するしょぼーんさんとしゃきーんさんのゲーム座談会

しょぼーんさん:「1666: Amsterdam」がPatrice Desilets氏の手に戻ったよーってなお話です。

しゃきーんさん:なんつーか、色々大変だったんだろうなぁ……。

しょぼーんさん:ほんと、Patrice Desilets氏とUbisoftは因縁めいた何かがある感じもしたからね。でも、ちゃんと和解できたなら何よりっすな。当分「1666: Amsterdam」がお目見えすることはないのだろうけど、どんなモノかは楽しみに見守りたい所存っす。……やっぱ、良いゲームがたくさん出てきてくれるような環境が望ましいよねぇ……。

しゃきーんさん:それが簡単にできりゃ、どの企業も問題なんぞ起きないのだろうよ。

記事にコメントを書く