レビュー「ゼノブレイド2」:絶対的強さを見せつける王道な物語と快適になってからが本番な戦闘を凄く楽しんだという話
王道を確かに見ました
“王道”の強さを知れ
突然ですが、王道ってどういうイメージでしょうか。以前どこかで書いた気もしておりますが、王道というのはとんでもなく強い。小手先じゃ通用しない、ビクともしない。そんな存在が王道です。
たまに、王道よりも変化球が好きだという人もいます。人間、好みがありますし私だってむしろ王道じゃない方が好きなケースが多いだけに、それも然りと言うほかありません。ですが、王道の味を知らずして、変化球の方が好きと比べる事はできないのも事実です。それくらい王道というのは「当たり前だけど強い」のです。だからこそ、人はその“王道”に対し、時に憧れ、時に妬み、時に共感し、時に反発するのだと思うわけであります。……今、何か良い事書いた!
と、”王道”をざっくり振り返ったところで、本日のレビュー対象である“ゼノブレイド2”を語っていきましょう。あ、毎度の事ですが、エンディングも含めた“完全ネタバレレビュー”ですので、お読みになる方は注意して下さいませ。
プレイ時間は280時間程度です
良い意味で猪突猛進な主人公と心優しいヒロインの“王道”セットに“王道”な仲間達
まずは、ゼノブレイド2のストーリーを見ていきます。
ストーリーは、とある理由で世界は雲海に覆われてしまい、人は巨神獣(アルス)と呼ばれる巨大な生物の上(もしくは内部)に住まざるを得なくなった世界で、雲海の底へ過去の遺産を取りにいく事を生活の糧(かて)とするサルベージャーこと主人公の少年“レックス”が、「天の聖杯」と呼ばれる伝説のブレイドことヒロインの“ホムラ”と出会い、彼女を“楽園”へ連れて行くことを目指して冒険するという内容です。ある意味「少年漫画と言っても良いくらい直球なストーリー」で、これを王道と評さずしてどうすればいいの? というくらい王道な物語になっています。ビバ、王道。
王道なイベントが目白押し
また、主人公レックスやホムラ達をサポートする仲間も、個性豊かな人物が揃っています。第3のヒロインといわざるを得ない存在へ昇格するニアやユニーク爺感満載のビャッコ、ブレイド愛というよりメイド愛な気がしてならないトラ、ストーリーでも戦闘でもその容姿からは想像できない活躍を果たすハナ、メインブレイドの影響で盾役にならざるを得ないけどまったくそんな風には見えない女性ながらに軍人気質なメレフ、何かと聞き耳を立てるシーンが多い気がするし言われているほど性能が良い様な気はしないこともないカグツチ。そして、演技ではなさそうな中二病的大人キャラクターのジーク・B・極(アルティメット)・玄武と、その動きにぴったり合わせる事ができるサイカ。シリアスとユーモアのバランスも非常に良く、しっかりと練られたストーリーである事に間違いはありません。ただし、強いて申し上げるなら、ジークの眼帯エピソードは欲しかった気がします。
我らがジークです
ストーリー全体を見れば、様々な困難や挫折などの“王道”的展開も含め、ブレる事なく直球です。まさに「ストーリーを楽しめるRPG」と言ってもいいでしょう。始まりから終わりまで、熱血少年が成長していく過程はまさに王道で、感情移入もしやすく感じられました。ぶっちゃけ、アニメでやってもまったく違和感なしにやっていけそうな気分です。強いて注文を付けるなら、これは私のプレイ方法に問題があったところかもしれませんが、各所のボス戦において「余裕で倒せるレベル」に到達してしまった時が多々あり、そんな状況なのにストーリー的な演出で苦戦しているムービーが流れてしまうようなケースが発生してしまったわけで、仕方がないとは言えど何パターンかは欲しかったと贅沢な事を思ってしまいました。
苦戦した記憶はないのですが……
一回の戦闘は長めで複雑ながらに、理解してバリエーションが増えると楽しくなってくる
では、次にシステム面をみていきましょう。
まずは戦闘システムからですが、一連の流れを説明する前に“ロール”の説明から入ります。MMOなどでよく見る、いわゆる“役割”のことですが、最大3人での戦闘が可能な本作は1キャラクターに最大3人までのブレイドを付ける事が可能で、各ブレイドには“ロール”が存在します。その“ロール”を何にしたかで、戦闘時にどういった行動をすべきか変化する、というモノです。
ホムラは攻撃です
ロールは、“攻撃”“防御”“回復”の全部で3つ。そこから3人選び出すので、例えば“攻撃”2人と“回復”1人の攻撃主体ながらに回復もできる様な編成ができます。どう戦うかは好みなので、色々と試行錯誤してみるのも良いかもしれません。体感的な感想で申し訳ありませんが、本作における防御役はちょっと地味でした……。
メレフにロール“防御”で刀ブレイドを集結
で、ここからが実際のバトルの解説になります。バトルは、ぶっちゃけ文字にすると大変ややこしいです。バトルの流れを順番に説明すると「分量が多くて余計わからなくなる」事に気づいたので、最初に「すべての一連の流れを紹介してから事細かに説明していく」手法にします。用語とかは後から解説していくので、どうぞ安心して下さい。
- オートアタックで、ドライバーアーツのゲージを溜める
- ドライバーアーツを使い、必殺技ゲージを溜める
- 必殺技を使い、ブレイドコンボを開始する
- 更に必殺技を使い、ブレイドコンボを連鎖させてブレイドコンボフィニッシュを発生させ、敵に属性玉を付与する
- 1~4を繰り返し、属性玉をたくさん付与する(同じ属性玉は1個しか付与できない)
- 属性玉をチェインアタックで破壊する(今作における最大のダメージソース)
以上が、今作における基本的なダメージの与え方です。アイテム狙いの場合は別の手段の方が良いのですが、とりあえずコレが基本だと思って下さい。
まず1から。抜刀しバトルに突入すると、敵が射程距離に入っていた場合は各キャラクターが勝手に攻撃をしかけます。いわゆる、通常攻撃に該当します。この通常攻撃によって、“ドライバーアーツ”という通常攻撃よりも強力で何かしらの効果を持っているケースが多い技のゲージが増えていきます。そのゲージが満タンになったらドライバーアーツが使えるので、タイミングよくドライバーアーツを使う事になります。
2も、ドライバーアーツの時と同じような展開です。ドライバーアーツを使い続けると、必殺技ゲージが溜まります。が、ドライバーアーツと違うのは必殺技ゲージは“基本的に”四段階まであります。どこまで溜めて使うのかは、威力を考慮するというのも有りですが、むしろソレよりも次のブレイドコンボを考慮する方が重要になります。
ホムラとニアの合体的な必殺
3と4のブレイドコンボというのは、特定の属性の必殺技を連鎖させる事で大ダメージを狙うシステムです。このブレイドコンボが少しややこしいところで、属性によって次の必殺技は何が連鎖するのかが決まっています。例えば、一番最初に火属性のブレイドによる必殺技を放ったら、次は火か水の必殺技でなければ連鎖にはなりません。
バトル中、右上に連鎖する属性が表記されてます
また、ブレイドコンボは3段階目でフィニッシュになりますが、ブレイドコンボ一発目は必殺技ゲージが一段目以上、ブレイドコンボ二発目は必殺技ゲージが二段目以上、ブレイドコンボフィニッシュになる3段階の時は必殺技ゲージの三段目以上が要求されます。もちろん、段階なんぞ気にせず使うこともできますが、ブレイドコンボフィニッシュを発生させると敵に“属性玉”を付与する事が可能で、この属性玉を敵に付与するためにブレイドコンボフィニッシュまで狙うのが目的となります。なお、フィニッシュまでおこなえば属性玉の他にも“増援封印”や“自爆封印”など何かしらの追加効果が得られます。
最後が火属性で発動する“オルタナティブサン”
属性は、全部で8種類あります。よって、属性玉を付与できるのも8個までとなっており、同じ属性のモノをいくつも付与する事はできません。ブレイドコンボフィニッシュの三段目に仕掛ける必殺技の属性が付与されるので、そこを考えながら属性玉を付与していく事になります。
たくさん付与させます
そして、その属性玉をすべて破壊するのが最後のチェインアタックです。すべてはチェインアタックを実行するための布石だと考えて下さい。チェインアタックをする際は、属性玉をいくつ破壊できたかでダメージが大きく変化します。だからこそ、極力多くの属性玉を付与する必要があるわけです。それらを考えながら、バトルを進める事になります。当然のことですが、雑魚戦ではチェインアタック到達前に敵を倒してしまう事も多々あるので、どのように戦うかは敵次第でもあると言えます。
一気に与えた時のダメージソースは大きい
以上のように、戦闘は少し複雑ですが、一言でいってしまえば「溜めるべきを溜めまくって一気に倒す」バトルという事になります。で、問題は「これらをテンポ良くおこなるように成長するまで結構時間がかかる」というところでしょう。私自身は、全レアブレイドを入手し、各キャラのレベルも99まで育てたので今でこそバトルは結構快適におこなえますが、そこに至るまでのバトルテンポは結構遅く感じられます。特に、キャラクターの戦闘用キズナリングが揃っていない序盤は余計に時間がかかります。
すべてそろえれば快適です
とはいえ、ストーリーを進めていけばブレイドが増えたり戦闘時にとれるアクションが増えるなど戦い方にバリエーションが増えていくので、後半にいけばいくほど戦闘は充実していきます。序盤は敵が堅くて冗長に思える戦闘も、クリア後はドライバーアーツや必殺技が飛び交い攻撃役はヘイトを稼いでしまいあっという間にターゲットを貰って、2,3発で沈むといった慌ただしく世知辛いシチュエーションに遭遇していくので、そこを楽しめるかどうかがひとつのポイントである事に間違いはないでしょう。なお、レビューするために「すべてのユニーク撃破」を達成している事と、全レアブレイドを育てたことをご報告しておきます。
育てるのに一番時間を食ったのは“ナナコオリ”
そのほかのシステム面に思った事
そんな時間がかかるという面を上手く利用したシステムが、“傭兵団”になります。ストーリーを一定のところまで進めると、余っているブレイドを傭兵として派遣する事ができます。そうする事で、育てていないブレイドも育てる事ができるという、一石二鳥的なシステムです。派遣すると一定時間で帰ってきて報酬を得ますが、その時間はスキルの有無で短縮される可能性があるだけに、上手く活用すれば成長に“多少”役立ちます。また、一部のクエストは傭兵団を派遣する事が必須だったりするので、なるべく活用するようにしておいたほうが色んなスキルを持ったブレイドが育って良いかもしれません。
部隊名にそこはかとない何かを感じる
次に成長システム。今作における成長システムは、よくあるRPGの経験値によるレベルアップと、それ以外の各ブレイドに設定されているノルマ的なモノをこなしてブレイドの能力を向上させるキズナリングの2つがあります。キズナリングは段階ごとにロックがかかっており、それを解除するには設定されたノルマをこなす必要があるのですが、概ね簡単にはいきません。特に信頼度を○○まで上げる系は、普通に戦闘しているだけでは全レアブレイドのキズナリングを解禁させる、というのは難しいでしょう。一番手っ取り早いのは、ポーチの中に何かつっこむ、というシンプルなモノです。全レアブレイドを解禁させた身としては、その結論に行き着かざるを得ませんでした。
ひたすらポーチに入れる作業
しかして、苦労の果てに育ったレアブレイド達を使うのは、それはそれで嬉しいモノがあります。どう足掻いても、性能的に“もう一人のヒロインであるヒカリが一番強い”という面を考慮したとしても、です。クリティカル補正を得たヒカリが最強である事に一切のブレはありませんが、レアブレイドたちのサブクエストでキズナが深まっていく様は、レアにはレアの物語があるというのを思い知らされるわけです。
使うか使わないかはさておいて、エピソードは嫌いじゃなかったクビラ
世の中にあるすべてのガチャが嫌いになれる“ブレイド同調”とシューティングをするハメになる「TIGER!TIGER!」
戦闘の要であるブレイドは、敵を倒したり宝箱で入手できるコアクリスタルを使う事で、新しく入手する事が可能です。とはいえ、コレがまた「何が出るかはランダム」なわけでして、もっぱら出にくい事で定評のある“KOS-MOS Re:”さんは、私の場合最上級のコアクリスタル「エピック」を100個程度とレアコアクリスタルを300個程度消費してやっと入手することができました。……出なさすぎでしょうよ、コンチクショウ。本当に出なさすぎて、コアクリスタル入手とブレイド同調しかしなかった日が3日間続いた時はどうしてやろうかと思いました。本当に心折れるかと思いましたし、世の中のガチャシステムすべてを恨まざるを得ない勢いでガチャが嫌いになれたというのは、不幸中の幸いなのかもしれません。
出なさすぎて泣きそうになってた“KOS-MOS Re:”さん
また、PTの要とも言える防御役キャラ“トラ”のブレイドであるハナJSやJK、JDに限っては、「TIGER!TIGER!」というシューティングをしないと強化できません。私の脳裏によぎった言葉は、「RPGやっているのになんでシューティングしないと強化できないんだろうか?」という事でした。しかも、慣れないと地味に難易度が高い。なかなか心を折りに来るシューティングである事に間違いはありません。ただし、ハナシリーズ3体はトラというキャラクターを完璧なまでにタンク役として昇華してくれるハイスペックシリーズなので、どれも育てる価値はあるという事をお知らせしておきます。
スコアがやり込み具合を教えてくれます
総評:ハードルは2つ、魅力あるキャラクター達とストーリーを全力で楽しめるか否かとジワジワ成長していく戦闘を楽しめるか否かだけど、僕は凄く楽しんだ
ストーリー重視のRPGは、プレイヤーに感情移入させたら“勝ち”という側面を持っています。感情移入できないというのは、そのゲームが感情移入させない何かの要素を持ち合わせていた、と評さざるを得なくなってしまうから、です。そういった意味では、最後まで“王道”を貫いたゼノブレイド2のメインストーリーは評価せざるを得ないレベルと言えます。間違いなく、“王道”と言わしめるに相応しいタイトルでしょう。熱血少年が、年上お姉さんを“楽園”へ連れて行くための王道な冒険譚を楽しみたいなら、俄然オススメです。逆に、王道が苦手でダークなストーリーが好き、という人にはオススメできないストーリーといえます。
ベタで王道だけど、最高というしかない一枚
確かに、システム面に不満があるのは間違いありません。戦闘は、戦闘スキルが揃ってくるまでテンポが良いとは言えませんし、クエストの指示場所を示すマップも分かりづらい。マップはパッチで改善されましたが、使い勝手にまだ改善の余地がある事は間違いないでしょう。ですが、ストーリーはそれを飲み込めるくらいには魅力がある内容でしたし、ジワジワと成長していって最終的に大型ユニークモンスターを倒せるようになったときは、結構な感動も去来しました。戦闘については、本当に成長するのに時間がかかりますが、敵を簡単に倒せるようになってきて、コンボの仕組み等々が分かってくると楽しむ要素も増えてくるので、そこに行き着けるかどうかがポイントです。
オオモノ退治は楽しいです
そして、やはり取り上げないといけない最大の難点は「ガチャという名のブレイド同調」でしょう。アレのやろうとした事は、基本的にステータスが固定化されている仲間(およびメインブレイド)に対し、他2体のブレイドを不確定要素にする事でその人だけのパーティ編成的なモノを目指した様な気がしないこともありませんが、結局のところ「自分が好きなレアブレイドを好きなように使って編成したい」と思ってしまいました。もちろん、ブレイドは「モノじゃない」というストーリーの重要な部分にも繋がっていくところだとは思えますが、根本的に「後半のレアブレイド出なさすぎ問題」はもうちょっとどうにかしてほしかった。……私の運が悪かっただけなのかどうかはさっぱりわかりませんが……。
“KOS-MOS Re:”さんが出てきた時に慌てて撮影したモノ
それに、保持できるブレイドの人数には上限があるので上限に行き着いたら結局リリースせざるを得ないのですが、リリースするモブなブレイドたちの台詞が何となく心にひっかかったりもします。レアが欲しいだけなのに……的なムードでひたすらブレイド同調という名のガチャを回し続けた身としましては、もう少しやりようがあったような気がしてなりません。先ほども書きましたが、間違いなく“ガチャ”そのものがかなり嫌いになれました。買い切りのゲームのガチャシステムでこれなのだから、有料のガチャなんてもってのほか、なんて思えてしまうのは私だけじゃないと確信しております。皆々様も、有料のガチャには是非気をつけましょう。
多少の不満はあれど、クリアしたときの爽快感溢れるストーリーはかなりの達成感を与えてくれました。色んな意味で、苦労した甲斐はあったと思えます。王道なストーリーを楽しみたい、という人はやってみる価値があるといっても過言ではありません。また、戦闘についても、序盤は冗長になりがちですが各ブレイドが育ってきて戦闘手段が豊富になると、徐々に大物にも挑もうという気持ちがでてきます。そういった意味でも、クリア後の強敵達もすべて討伐した者としてかなり満喫できた一作でした。もちろん、後日配信予定のDLCにも期待を寄せています。Nintendo Switchで長編RPGがしてみたいという人やゼノシリーズが好きだという人は、何事にもまっすぐな少年レックスになって心優しいお姉さんのホムラやヒカリ、そのほか愉快な仲間達と楽園を目指す冒険へ繰り出してみる事をオススメさせていただきます。
やってきた事のすべてが報われた気がする
ドライバーアーツとブレイドアーツ、と表記するとよりわかりやすいかもしれません