レビュー「ラングリッサー リインカーネーション −転生−」:丁寧に何が悪かったかを書いたら馬鹿長いレビューができあがった位にはあれこれ言いたい一作
SRPGとして、ただひたすらに雑
前置き
某有名RPGで、「誰かを助けるのに理由がいるのかい?」という名言があります。絶妙なタイミングで、かっこよく言ってのけるからこそ名言となり得るわけですが、現実はそう簡単にはいきません。むしろ、現実とのギャップこそがこの台詞を有名にしたといっても過言ではないでしょう。
当ブログのスタンスは、「ゲームに興味があれば、誰にでもわかりやすく書く」「良い点と悪い点がはっきりわかるように書く」「何を楽しめばいいのかを明記する」のがレビューのモットーです。ですが、古くはファミコンからスーパーファミコン、PS・サターン時代を経験しておりますと、どう足掻いても「救いがたいくらい良い点が見いだせないゲーム」に遭遇してしまう事もあります。
例えば、「摩訶摩訶」「デスクリムゾン」「里見の謎」などもそれに近いモノがありますが、それらは他者に対する笑いのネタとして調理すべきゲームへと昇華されているわけで、ここで言う私の「良い点がないゲーム」というのは、それとは次元が違います。要するに、「まじめに作ったであろうはずなのに、どう足掻いてもほめるところがないゲーム」というヤツです。その手のゲームは、この2015年において相当数減ってきました。いや、インディーや同人ゲームをあさっていればあるにはあるのですが、家庭用機においては一部の子供向けとコアなジャンル向け以外なかなか出会えるモノではありません。
私としては、このブログでは決して「物事を過剰に、過激に書くつもりはない」ことを心に誓っておりまして。いかなる作品でも、レビューする際は「良い点」をしっかりと見いだす努力をします。そこら辺を踏まえ、今回のレビューは「過激でも過剰でもなんでもなく、本当にそんな仕様なのだ」という事を心に刻んでお読みいただければ幸いです。おこがましいですが、私如きでは「誰でも助ける聖人君子」にはなれませんでした。
あ、ここまでが前置きです。
2015年に作られたクオリティとは思えない
さて、15年ぶりに帰ってきたラングリッサーシリーズ最新作ですが、先に申し上げておきますとわたくしめはちゃんと本作を「クリアした」ことをご報告しておきます。いや、闇ルートのみですけど。でも、1周すれば十分でしょう。いや、なぜだか「すごく嫌いというわけじゃない」ので、本当に何もすることがなくて暇をもてあましててしょうがない時はやるかもしれませんけど。
クリア時の主人公
で、結論から言えば「15年ぶりに帰ってきたと思ったら、あまりにも雑すぎて悪いところしか目に付かなくなる」一作といって間違いありません。むしろ、低評価なゲームをレビューする方々が、本作をどのように調理するのか楽しみにしておくゲームと言っても良いでしょう。……えーっと、先にも書きましたが、決して「過激、過剰な事を書いてるつもりはない」事は念を押しておく所存です。
では、何が問題なのかをピックアップしていきましょう。まずは、ラングリッサーシリーズとしてではなく、ただのいち新作として見ていきます。
1.UI・システム・操作性が酷い
ドラゴンズドグマオンラインもそこそこにUIが酷かったのですが、それとは比にならないくらい「圧倒的な破壊力」をもってプレイヤーの精神を攻めてきます。なかなか手厚い洗礼ですが、ひたすらに我慢するしかありません。とても快適にゲームをさせる気はないですし、すべての動きがもっさりしているし、しかも操作するのがシンドイ。何でこんなにレスポンスが悪い出来のモノを世に放ってしまったのかが気になって仕方がありません。
ほかには、試行錯誤がモノをいうシミュレーションなのに途中セーブもないし戦闘中のロードもない。ソフトリセットなんて贅沢機能は当然のように存在していません。あとは、魔法に関する抵抗値も不明。傭兵を雇う際に、傭兵の基本ステータスも分からない。装備品を買うときに武具のステータスも分からない。効果も文章でしか分からず、シミュレートさせてくれない。装備品に関しては、ヘルプに「指揮官を選んで任意の装備品を選択しましょう」と書かれておりますが、実際はその逆で「アイテムを選んでそれを誰かに装備させる」仕様です。つまり、一度装備した武具は「違う装備品を装備させない限り外せない」仕様という事なので、違うキャラにアレを装備させたいなんて事は考えちゃいけません。
また、「クラスチェンジ」さえ、クラスチェンジ先がどんな内容なのか分からないまま、一度決めたらキャンセルはできない男前な仕様です。クラスチェンジ後の能力を知りたくば、一度決めて能力をメモしておき、リセット。その後、やり直してもう片方を確認するしかありません。ちなみに、先も書いた通りソフトリセットなんて贅沢な機能は存在していませんので、ホームボタンからゲームを終了し、再起動させてやり直す他に選択肢はないことをお知らせしておきます。
上記以外にもあるのですが、挙げたらキリがないので、不親切がここまで極まったモノもそうはないくらい素晴らしい出来だというのが伝われば、私としては悔いはありません。
2.戦闘シーンが酷い
戦闘シーンも、チープすぎて酷い。「敵を倒して爆発はシリーズ恒例なので問題なし」ですが、そもそも戦闘しているデフォルメキャラクターたちさえも何をしているのか良くわからない仕様です。「このクオリティ、PS時代によく見ました」と言う感想が出てきてしまいました。
いつもなら、グラフィックに関して云々いうことはありませんが、流石にこの戦闘アニメーションはちょっと酷すぎて突っ込まざるをえません。ラングリッサー2時代なら2Dドット絵だったので戦闘アニメも何をやっているのかを理解できますが、こんな出来じゃわざわざ3Dにする意味がわからないのです。いや、本作に限っては戦闘アニメの存在価値がわからない。2Dドット絵で戦闘させた方が遙かにマシだと思えてしまいました。
3.ゲームの流れが酷い
いわずもがな、テンポも悪いです。本作はターン制シミュレーションですが、キャラクターのクラスやレベルによって行動する順番が決まっています。それらに関する説明が一切ないあたりにアツイ何かがこみ上げてきますが、それは我慢できたとしても次はちょっとマップを見回しただけで「誰の順番だったか分からなくなる問題」が発生します。わざわざ何体もいる仲間から、誰の順番だったかを探し出さねばいけなくなります。誰の順番だったかを覚えておきながらマップを見回すという、脳の活性化に役立ちそうな仕様なのです。
(7/31追記:マップを見回した場合、Yボタンを押すとその順番のキャラクターにカーソルが移動することを発見しました。レスポンスが悪いので十字ボタンと同時押しをするとたまに動きませんが、「誰の順番だったか分からなくなる」心配はかなり減ります。)
ついでに、先も書いた通りボタンのレスポンスが異様に悪いので、キャラクターの行動終了後にシステムが次のキャラへカーソルを移動させている最中にAボタン等々を連打していると、そのキャラにカーソルが合う前にメニューが出てしまうという「要修正」の烙印を押すべき雑な仕様となっています。とことん「快適にゲームなんぞさせやしない!」という大変力強い意志を見せつけてくれるのは、本当に涙なしには語れない。
また、敵の行動も逐一見ないといけないので、待っている時間が面倒になってきます。それが素早く動いてくれるならまだしも、かなりのんびりペースで動きます。これを作った方々は、最近のシミュレーションをプレイしていないのか、それとも作れなかったのかは知りませんが、高速化や敵の行動はスキップなど色々あったのではなかろうかと。「最近のシミュレーションなんぞ知らん!」と言われたら、もはやぐぅの音も出ませんが。
4.マップが広すぎた
本作は、指揮官たるプレイヤーキャラクターや仲間たちの他に、傭兵を雇って戦うことになりますが、傭兵の最大人数が4となっています。ですが、それに対してマップが無駄に広い。移動力4~5程度のユニットが、数ターンかけて移動しなければならないのは、ただただ苦痛です。とても考えてマップデザインしたとは言いがたい。
それに、「この地点まで移動させろ」等々の内容は、すこぶる見づらいし分かりづらい。マップの端ならまだわかりますが、似たような風景のマップで「だいたいこの地点」なんぞ言われた日には、ただでさえ見づらいマップなのに敵をおびき寄せる事さえ苦行となります。
5.快適にする術は、戦闘アニメをオフにするだけ
上記の4点で、もはやゲームそのモノが快適じゃないというのは分かってもらえたというのを前提にしますが、快適じゃない以上快適にする術を探さねばなりません。が、快適にする選択肢はたった一つ。「戦闘アニメーションをオフにすること」くらいです。オプションでいじれるのはそれくらいですが、アニメーションがなくなるだけで多少はマシになります。多少、です。ですが、その多少で少しは許容できるようになるでしょうから、オフにしておくことをオススメします。
以上のような点で、実にシステム等々が悪すぎてストレスが溜まるゲームとなっております。2015年においてこのようなゲームが家庭用機で出てくること自体、結構驚きを隠せないレベルだというのが何となくおわかりいただけたでしょうか。
シリーズとしてどう見るか
では、次はラングリッサーシリーズとしてはどうなのかを見ていきます。ちなみに、私自身は1~5とミレニアムまできちんと網羅しています。
傭兵について思うこと
伝統的に言えば、雇える傭兵は一度そのクラスになれば違った系統になっても継承されるのですが、今作は「クラスに依存」しています。私の場合、騎兵から槍兵にクラスチェンジしたら、騎兵系の傭兵が雇えなくなりました。不具合か仕様なのかは知りませんが、雇えなくなったのだからこれまた涙なしに語れない話です。
また、傭兵の最大人数が過去作に比べて、6から4へと減りました。おかげさまで、ただでさえ広いマップが余計に広く感じます。それに伴い、試行錯誤する機会も減りましたし、傭兵がターン終了時に勝手に付いてくる時と付いてこない時があったりと、傭兵の仕様が何とも言いがたいモノへと変貌しておりました。このシリーズのウリだったところなのですが、ここでも雑な仕事を見せつけてくれます。
キャラクターデザインは賛否?
こちらのインタビューにて、キャラクターデザインが旧シリーズのうるし原智志氏じゃなくなった理由等々が書かれていますが、このような出来では純粋にターゲットが定まっていなかったという印象を受けます。旧来のファンにアピールしたいなら、旧来のファンが喜ぶアプローチをすべきでしたし、新規顧客をターゲットにしたならば、新規顧客に向けて作り上げるべきでした。そもそも、15年ぶりに出るゲームながらに新規顧客獲得を目指し仕切り直すなら、それがわかるアプローチをすべきです。「二兎を追う者は一兎をも得ず」という事でしょう。いやまぁ、新規顧客狙いでこの出来映えだと、結局ブランドの印象を悪くするだけな気がしてなりませんが。
サウンドは良い、ただしサントラは激おこです
本作で唯一両手を挙げて賞賛できるのは、サウンドです。そこだけは、間違いなくラングリッサーをしています。私自身、岩垂氏のラングリッサーミュージックが聴きたくて買ったので、本当に安心できました。むしろ、音楽に後押しされてクリアまでこぎ着けたと言っても過言ではないでしょう。
しかして、公式サイトにあるサウンド一覧と、限定版に入ってるサントラの曲数が違うというなかなかに神経を逆なでしてくれる仕様でした。それに関しては、公式でも謝罪をしている(PDF)わけですが、発売後に謝罪するとか製品管理がまるでできていない事が浮き彫りになった形です。本作の、唯一無二の良いところはサウンドなのに、サントラでさえこの始末というのは一体全体何をどう雑に扱えばこうなるのか、開発事情が知りたい気持ちでいっぱいです。
総括:これで失った信用はいかほど?
私個人の意見ですが、「時間がかかるゲーム」というのと、「やり込めるゲーム」というのは根本的に違っています。そういった意味では、このゲームは「システム面等々が雑すぎて、ただただ漠然と時間がかかるゲーム」であったのは間違いないことでした。ですが、サウンド目的であった以上、ある程度不評になるであろう要素に対して目をつぶる覚悟はしていましたし、うっすらと見えていた地雷を踏みに行った事に後悔はありません。しかして、覚悟していた割には不満が多かったのも否めません。システム面だけでも改善されれば、かなり「まともになる」のも間違いないとは思えますが。
シリーズを復活させようという意気込みはスゴイですし、シリーズを知っている人たちにとって朗報だったことは間違いありません。ですが、この雑な出来映えだと少々許容しがたいのも間違いない事です。なんだかんだとクリアした私としては、クリアさせるくらいには許容できる何かがあったのも間違いありませんが、雑な出来映えである事は到底否定できません。そもそも、開発陣にオリジナルスタッフがいるかいないかわかりませんが、旧作に似せるにしても何にしてももう少しやりようがあったと思わせてくれます。
それこそ、子供の頃から色んな駄作を見てきた身としては、本作のような作品もわからんではありませんが、2015年の今になってこの手のゲームがフルプライスで存在していいとは言いがたい。私としては、出来の悪い早期アクセスゲームをしている気分でした。快適さの欠片も存在していませんし、ほかの人に勧める事は断じてできません。誰が何を言おうと、私にとっては今のところ「地雷である可能性も考慮しつつサントラ欲しさに踏みにいったら、想定を遙かに上回る破壊力だった」という評価です。このご時世に、「20年以上前のラングリッサー2(あるいはデア・ラングリッサー)より雑な作りで、しかもフルプライスを要求してくるメーカー」が存在するとは思いも寄りませんでした。会社名がエクストリームなだけに、いくらなんでも「極端」すぎです。
こちらのインタビューを読む限り、なにやらラングリッサーシリーズとして第2弾、第3弾が計画されているそうですが、コレをプレイした人たちがどれだけ「次回作」に期待しているのかは皆目見えてきません。いや、当ブログとしましては、ここまでくるといっそ怖いモノ見たさが出てきてしまうあたり、B級映画好きな性格が出てしまっているとも思いますが。なんだかんだと、終始辛辣に書いたレビューだとは思いますが、「決して過剰、過激に書いたわけじゃない」事を今一度明記しつつ、本レビューを締めさせていただきます。
とてつもなく熱いレビューお疲れ様です
筆者の気持ちが籠もりまくってて凄いw
自分は一応全ルートクリアするつもりで今は3ルート目なんですが
いやーよくもまあ今の時勢にこんなゲーム出せたなあと逆に関心してしまうレベル
音楽以外全てが低評価のクソゲーと言われるもののお手本みたいな代物ですねえ