連載:気まぐれゲーム雑記 第1044回:元スクエニの和田洋一氏によるCEROに関する話題が実に面白い
当局の規制が行われたらアウトなわけです。
対外的に必要なモノなのです。
AZです。「カルドセプト リボルト」始めました。
それはさておき、元スクエニの和田洋一氏によるCEROに関する話題が実に面白い事になっているので、ご紹介です。
和田:スクウェア社長時代には、元々CESAに対しては批判的でした。ですが、皆さん真面目にやってらっしゃいますし、当時の渡辺専務理事がずっと私のところに説得に通ってくださっていて、あまりにも申し訳ないから参加するようになりました。
その内に、当時の辻本会長から暴力ゲームの話が出ました。これは滅茶苦茶に拗れまくっていて、下手すると大幅規制か不買運動になりそうなレベルでした。私が副会長くらいだった時(確か広報担当でした)、さすがに危ないという話をしたら、じゃあ和田さんやる?と辻本さんから言われて。また、全然違うところで襟川さんからもやれと言われ。襟川さんなんか凄い理屈でしたよ。「私は忙しい、あなたやんなさいよ。私は社長と主婦だけど、あんたは社長だけでしょう。だからあんたの方が暇なはず!」ともかく、確かにかなりまずい状態になっていたので、その時は、暴力ゲーム問題解決をCESAのアジェンダとして明確に掲げ、引き受ける事にしました。(実はお引き受けする決定的瞬間の記憶はありません。この頃は、皆さん創業初代の方達で、その中では私が圧倒的に若輩でした。皆さんが世代交代をお考えになっており、皆さんの総意、流れのような形で譲られた印象です)
いや本当にやばかったんですよ。自然体では最早どうにもなりませんでした。ちなみに、ゲーム業界はそれまで2回敗戦していました。一つが風営法ですよね。これは対応の仕方がもっとあったかもしれませんね。もう一つは中古問題で、最高裁で負けていますよね。スクエニなんて主力がRPGだから中古によって利益の3~4割漏れていたんじゃないですかね。つまり、舐めてかかると本当に業界の浮沈に影響するような事態を招くんですよ。当時はアメリカでも大騒ぎしていました。アメリカではバイオレンスよりもセックスの方ですね。これが物凄く言われていて、日米双方で締め付けられたら本当に逃げ場がなくなる。
さて、どこから手を付けようかと思い、まず、世間はそもそも何を気にしているんだろう、論点は何かを把握する事から始めました。どうも話が咬み合っていない気がしていたので。 辻本さんを始めとした当時のCESAは表現の自由を主張していました。これに対して、何作ってもいい訳ないだろう、という声が上がっていました。いろいろヒアリングしていく内に、警察庁のある方が、「和田さん、こんなの娘に見せられますか!」と仰ったんです。それでストンと肚に落ちました。あっ、娘に見せたくないという事ね、成程。つまり、青少年健全育成の観点で反対なさっていたのだと。これで、論点を表現の自由から青少年健全育成に変え、手法としては隔離政策にしよう、と戦略が決まった。
~中略~
隔離政策は、ゲーム会社、レーティング機構(以下、CERO)、流通の三位一体を前提に設計しました。まずは、当時既に存在していたCEROをもっと実務的に動かそうと思いましたね。告白するとスクウェア社長時代、私はレーティング適用が嫌だったのでCESA(元々CESAがCEROの母体)にも批判的でした。だって受ける必要ないから。怖いゲームを作っているカプコンさんやコナミさんは受けてください。うちは関係ありません、みたいな。しかし自主規制を謳うのであれば、例外を認めるわけにはいきません。推進にあたっては、CESAの上月初代会長、辻本二代目会長と続く良き伝統が役立ちました。常任理事は全員、代表権を持っていなければならないというルールです。一々持ち帰らずに即決できます。私は理事の皆さんに「とにかく一枚岩で行きましょう。僕もそうしますけど、皆さん方の会社も絶対守ってください。全てのゲームについてレーティングを受けてください」と、お願いしました。皆さんにご協力いただき、団結できました。この動きが業界全体に浸透し、レーティング適用率はほぼ100%になっていきます。
~中略~
ここまでやってギリギリなんですね。当局や世間への対応は簡単な話じゃないので、あまり舐めない方がいいと思います。真面目にやるのだとしたら、じゃあ何が論点かというのをちゃんと見極めなければならないし、論点をクリアするための手段も、本当に実務として経営として考え、実行しなければならないんです。これで行こうよ、方針出して終わり…これじゃ何も動きません。実効性ゼロ。そもそも自主規制なんて、よほど頑張らないと誰もやりませんよ、だって儲からないんだもん。しかし一方で、業界が先んじてやらないと当局がバンバン差し込んできますから、知らないうちに大変なことになっちゃう。
[引用元:Fack Book]
なんとも、ご苦労様ですねぇ……。
私個人としましては、レーティングに対して一定の基準はあっても良いとは思うモノの、それを持って規制対象が生まれてしまうというのは実に微妙な話だとも思っております。しかして、レーティングをやらなければならなかった事情がそこに存在していた事も間違いはありません。当局による規制が入ってきてしまったら、ソレこそ業界の死活問題にもなります。
それに、非実在青少年がなんちゃらと大真面目に言ってくる方々に対して、暴力的要素を持ったゲームの内容を理解させようとしたところで、分かって貰えないのは明白です。ともなると、自主規制に走らざるを得なかった事情というのがありありと見てとれますし、CEROのレーティング自体はそういった“余りゲームに興味がない人”をターゲットにしている事も見えてくるわけです。
一方で、CEROのレーティングは一部のゲームに対し面倒な表現規制をかける必要がでてしまい、厄介な存在として見ているゲーム好き達がいるのも確かです。そりゃまぁ、「当局や世間への対応」のためだけにやりたいゲームの一部内容が規制対象になってしまったともなれば、涙なしには語れないレベルとも言えます。もう少し、落としどころを模索して欲しいとは思ったりもしますが……。
家庭用機の場合、表現規制の問題とCEROの関係は切っても切れないモノがあるわけですが、どこまで対外的な事をやりつつも、既存のゲームプレイヤー達に納得がいくようなモノへと変えていけるかどうかも一つの重要なポイントだとも感じるところはあります。今後も、対外的な役割を果たしつつも、より良い形になっていく事を期待したい限りですね。
:元スクエニの和田洋一氏によるCEROに関する話題が実に面白かったよーってなお話です。
:まぁ、元々対外的なモノだっつーのは分かってる話だよな。
:いわゆる、業界による自主規制ってヤツだからね。でも、「一部の内容が削除されました」みたいなモノをみるたびに、何とも言えない気持ちになるのは否定できないね。もうちょっと、上手い落としどころを作って欲しいとは思うかな。……そんなCEROも変わるきっかけが出てきそうだし、上手いこと機能すると良いんだけどねぇ……。
:ま、すぐさまどうこう変わるとは思いがたいから、色々と時代に合わせていって欲しいとは思うよな。