連載:気まぐれゲーム雑記 第765回:任天堂とDeNAの資本業務提携話において、ポイントとなるのは「プラットフォームの再定義」と「新メンバーズサービス」

気まぐれゲーム雑記
第765回:任天堂とDeNAの資本業務提携話において、ポイントとなるのは「プラットフォームの再定義」と「新メンバーズサービス」

どれほど“プラットフォーム”を大きくできるか。

スマホの人とコンシューマーの人とお金周りを見守る人で見方が変わる案件

AZです。リニューアル作業ばかりやっていますが、私はゲーム大好きでゲーム狂いなゲーマーだと思い続けています。

それはさておき、任天堂がDeNAと資本業務提携を発表しました。それらに関し、商業メディアや組織的にやってるブログ、単なる個人等々がきちんとした記事内容から「スマホにマリオ」とか「屈した」と雑な見出しの記事まで躍り出ておるようですが、すでに任天堂は公式に発表内容を公開しておりますので、それらをゆるりとまとめてみます。

任天堂:岩田社長

ゲーム専用機ビジネスの将来について

  • ここ数年、スマートデバイスの普及により、ゲーム専用機ビジネスの将来について、どちらかと言えば悲観的な意見を頂戴する事が増えた
  • 任天堂が、プラットフォーム移行のタイミングに超円高がかさなり、収支のバランスを崩した事や、DSから3DS、WiiからWii Uへの移行がスムーズに進まなかった時期と重なったのも影響していると思う
  • 色んな専用デバイスがスマートデバイスに呑み込まれてきたと言われているのと同じように、「ゲーム専用機もスマートデバイスに呑み込まれるのではないか」というのも言われている
  • しかし、スマートデバイスが呑み込んできたと言われている他の専用デバイスと違って、任天堂のゲーム専用機ハード上で動くソフトの最大供給者は、ハード供給者でもある任天堂自身
  • 「コンテンツを誰が供給しているのか」というのは、とても重要な話だが、ゲーム専用機に対する悲観論はこの前提を無視している
  • スマートデバイスが広く普及したことで、ゲーム専用機のハード普及が以前に比べて難しくなったという課題はあるが、ハード・ソフト一体型のビジネスモデルは現在も有効に機能しているし、家庭用ゲーム専用機の未来を悲観視していない

任天堂の強み

  • 任天堂の強みは、ソフトやキャラクター等の任天堂IP
  • 任天堂IPの価値を最大化するために、任天堂IPの価値をストレスなく体験してもらえるようにするため、スマートデバイスを積極的に活用する
  • 任天堂IPに触れる人口を最大化し、ゲーム人口を拡大させていくのが基本戦略
  • 何故方針転換したのかと言えば、元々スマートデバイスでゲームを作る事に否定的だったわけではない
  • デジタルの世界ではコンテンツ価値が容易にデフレ化し消耗しがちな事や、スマートデバイスはコンテンツの新陳代謝が激しく寿命が短くなりがちで、コンテンツ価値の維持が容易ではないが、そこに任天堂なりの答えが出せた
  • スマートデバイスのゲームビジネスは「楽に儲かるビジネス」と認識されている面もあるが、競争環境も厳しく持続的に成果を出せるコンテンツ供給者はほんの一握りであり、任天堂にとっても少数の勝者の一員になれないのならば、スマートデバイスでのソフトビジネスに参入する意味がない
  • やる以上は、絶対の勝算を持って臨みたい

DeNAの強み

  • DeNAの強みは、世界トップレベルのWebサービスの構築・運営ノウハウ
  • 任天堂とDeNAは、グローバル市場を対象としたスマートデバイス向けゲームアプリを共同で開発・運営する
  • 当然ながらこの事業に取り組む以上、億単位の人に遊んでもらうことを目指す
  • 任天堂IPについては、例外を設けることなくすべてスマートデバイスで活用チャンスがあると思っているが、ある程度タイトル数を絞り込んで展開・運営していく
  • 同じIPがあるからといって、ゲーム専用機向けのタイトルをそのままスマートデバイスへ移植する事はしない
  • 理由は、タッチスクリーンと専用コントローラーは操作の特性、強み弱みが大きく違うので、ゲーム専用機の過去タイトルを単純にスマートデバイスへ移植することは一切予定していない
  • 最高のプレイ体験をお届けできないなら、任天堂IPの価値が傷つくだけ
  • これからの開発は、ゲーム専用機向けにはこれまで通りしっかり開発し、スマートデバイス向けには同じIPを活用するとしても、スマートデバイスのプレイスタイルにあわせた全く別のゲームを作る

ゲームビジネスに対する情熱や展望を失っていない証明は“NX”

  • 今回の協業には直接関係ないが、任天堂がスマートデバイスでゲームビジネスを展開することにしたのは、ゲームビジネスに対する情熱や展望を失ったからではなく、ゲーム専用機に展開されている素晴らしい価値のあるゲームについて世界中の多くの人達に認識してもらうきっかけをつくるため
  • 任天堂がゲーム専用機ビジネスに対する情熱を持ち続けているひとつの証明として、今のビジネス環境に適合するために、任天堂は全く新しいコンセプトのゲーム専用機プラットフォームをコード名「NX」として開発中で、具体的な話は来年できると思う

新しいメンバーズサービスは、新しいプラットフォームの中核要素

  • スマートデバイスを通じて任天堂とつながり、任天堂IPに興味をもった人によりプレミアムなゲームプレイ体験を任天堂ゲーム専用機を介して提供したい
  • スマートデバイスとゲーム専用機が限られた需要を奪い合うのではなく、新しい需要を創り出して相乗効果を生み出していけると確信している
  • スムーズな移行を実現するため、3DS、Wii U、NX、スマートデバイス、PCなど複数のデバイスを統合する新しいメンバーズサービスをDeNAと任天堂が共同開発し、任天堂が中心となって運営する
  • このサービスは任天堂の新しいプラットフォームの中核要素の一つとなる
  • スマートデバイスで成功しているコンテンツ配給者は、単一のヒットタイトルに依存している構造がほとんどだが、任天堂IPを活用して取り組む以上は、スマートデバイスで早期に複数のヒットタイトルを生み出せるようにしたい
  • ゲーム専用機のプラットフォームの定義がデバイス単位だったことに対し、ゲーム専用機とスマートデバイスという複数のデバイスを統合して、より多くのソフトを届けるという任天堂プラットフォームの再定義への取り組み

DeNA:守安社長

  • DeNAの強みは、モバイルインターネットのノウハウであり、具体的に「大規模トラフィックを処理するインフラ構築力」「ユーザの利用状況を分析してスピーディーにサービスを改善する運営力」「モバイルの特徴である、小さい画面や隙間時間での利用に最適化するサービス設計力」などが挙げられる
  • 昨年、ようやくスマホアプリでもヒット作を生み出す事ができ、アプリ市場でも戦える手応えを掴んだ
  • その一方で、スマホアプリゲームのマーケットは競争が激化しており、色んな新作が出るもののゲームを手に取って遊んで貰うのが難しくなってきて、その傾向は日本だけじゃなくグローバルに共通した傾向
  • 大量にあるゲームの中で遊んで貰うためには差別化が必要であり、最もわかりやすい差別化要素がIPである
  • 任天堂はゲームIPで最も世界から支持されている会社
  • DeNAの主力事業であるモバイルゲーム事業を成長させる上で、考えられる戦略オプションの中で最良のプラン
  • 「両社の企業文化は、全く合わないのではないか?」と感じていらっしゃる人もいるだろうが、実は正反対
  • 資本提携については、短期プロジェクトというよりは、中長期視点で大きな事業にしていく事と、今回の発表した提携内容に留まらず、お互いの企業価値が向上する取り組みについては積極的に検討していく事を強固に推進していく考えだから

[情報・引用元:任天堂

だいたいそんな感じに集約されています。まぁ、見ての通り長いですね。

さて、長すぎるので、重要なポイントとして上げられる「再定義」や「新メンバーズサービス」について、思うところを書いておこうと思う次第です。ああ、毎度ながら私個人の妄想ですので、妄想に囚われないよう注意して下さい。

DeNAと手を組んだ理由としては、いくつかの条件が重なる事が考えられます。まず、スマートデバイス向けに何かやっていくにしては、ノウハウゼロからスタートするのはすでに厳しいという現状。その現状を踏まえれば、協業を選択するのは妥当です。で、「スマートデバイス向けにヒットタイトルが単一ではない」という事と、莫大な会員数を管理運営できるプラットフォームビジネスとしての視点を持つことができる企業となれば、日本でもそう多くはないでしょう。せいぜいGREEかDeNAくらいになりますが、DeNAからアプローチがあれば、あとは落としどころを見出すくらいです。そもそも、任天堂のWEBサービスは貧弱すぎるところもありましたし、DeNAの企業の印象はさておくとして、条件を満たすか否かを考えればさほど選択肢もなかったことが窺えます。

今回の「新メンバーズサービス」というのは、非常に大きな囲い込みをしようという目論みになります。むしろ、そこが本命にも思っています。スマートデバイス向けの胴元と言えばAppleとGoogleになるわけですが、スマートデバイス向けはそこを考慮しながら、より早く家庭用ゲーム機へと人を導く事が狙いといっているわけですし、そこを繋ぐために独自の会員制サービスを展開するとも言えるわけです。

また、「任天堂プラットフォームの再定義」を掲げながら、「全く新しいコンセプトのゲーム専用機プラットフォームをコード名“NX”として開発中」と発表しているあたりを見ると、やはり「ゲーム専用機プラットフォーム」という言い方は非常に気になります。物理ハード的なモノなのか、何なのか、色んな可能性を含んだモノになっているのは間違いありませんし、それが「新メンバーズサービス」なるモノを中心に結び付くやり方は実に任天堂らしい囲い込みな気がしないこともありません。

あとは、スマートデバイス向けに過去作を使い回すような事は一切しないし、同じタイトルであってもスマートデバイス向けと家庭用機向けそれぞれのゲーム内容は同じにしないあたりも、明確に切り分けています。そこからどれだけの人を家庭用機へと導く事ができるのか、任天堂としての勝負どころはそこだという事でしょう。

実際にサービス展開されるまで今回の発表結果が出てくる訳もありませんが、質疑応答にて年内中には何かしら出てくる事を示唆しています。かなりの勢いで話題を呼ぶ事になりそうですが、任天堂の新しい一手を生暖かく見守っておきたいモノですね。

しょぼーんさんとしゃきーんさんのゲーム座談会

しょぼーんさん:任天堂がDeNAと組んだって内容で、要するにキモな部分は「再定義」とか「メンバーズサービス」になるのだろうなぁと思ったわけでして。

しゃきーんさん:ま、実際やり出してみないとわからん事ではあるな。

しょぼーんさん:色んな意味で期待はしたいかな。正直、出てくる前から否定しても埒があかんでしょうよ、とは思うし。あとは、プラットフォームはサービスになっていくのかな? という雰囲気もしたかな。……ま、何を言おうが「面白いゲームがやれればそれで良い」とも思いますけどネー。

しゃきーんさん:確かに、何を言ったところで自身にとって良いゲームがでてくりゃそれに越した事はないな……。

連載:気まぐれゲーム雑記 第765回:任天堂とDeNAの資本業務提携話において、ポイントとなるのは「プラットフォームの再定義」と「新メンバーズサービス」に関するしょぼーんさんとしゃきーんさんのゲーム座談会

しょぼーんさん

しゃきーんさん

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