連載:気まぐれゲーム雑記 第134回:任天堂の経営方針説明会をまとめてたら大量になってしまったので大きく5つにわけてみる、と言う話題
気まぐれゲーム雑記
第134回「任天堂の経営方針説明会をまとめてたら大量になってしまったので大きく5つにわけてみる、と言う話題」
まぁ、わかってはいましたけどべらぼうに長いのです。
営業赤字を出した任天堂
任天堂が、営業赤字であることを先日発表しました。
営業赤字というのは本業において赤字ということで、円安効果がなければ黒字は難しかったでしょう。ともなれば業績予想を下方修正するのも必然なことで、来期はどうなっていくのかが心配されるところでもあります。まぁ、基本的にかなり企業体力を持っている(要するに資産がある)会社なので、今後の挽回劇となるか否かが注目どころ、とも言いましょうか。
そんな任天堂ですが、先日経営方針説明会を発表しました。詳しくはこちら。
で、いつも通りにまとめようとしたところ、とんでもなく膨大な量のまとめになってしまいまして、本当にまとめたのか? 的な内容になってしまいました。これでは長文過ぎてまるで興味をもってもらえないという事を危惧して考えた結果、まとめを大きく4つに分けてトークしてみようかと思った次第です。……それでも長くてゴメンナサイ、と先に謝っておきます。
3DSの現状について
まず、3DSの現状についてはだいたい以下のような感じに発表されています。
- 日本市場だと3DSはDSのペースよりも若干おくれていて、出足こそ躓きはしたが、すでに普及の軌道に戻す事ができた
- 日本での2012年ソフトチャートトップ20は14タイトルが任天堂のプラットフォームで9タイトルが3DS、特に「とびだせ どうぶつの森」はかなり牽引した
- 日本での3DSは当初の想定以上の結果を出す事ができた
- 今回の業績予想見直しは、アメリカ市場の伸び悩みが大きな要因
- 3DSは、日本市場ではリードする立場を確立できたが、海外市場では計画を大きく下回り、通期販売目標を下方修正する大きな要因になった
- 海外では、マリオソフト以外に大きなヒットソフトがだせていない
- ハード販売に伴って伸びるはずのソフト販売が、期待通りに伸ばせなかった
- 3DSの課題は、日本市場と同様の流れを海外市場でいかに生み出すかなので、今年はそこを伸ばしていきたい
3DSが昨年から海外で不振状態なのはわかっていますが、やはり今回も業績予想を見直さなければならないほど影響しているのは確かのようです。
日本では、かなり明確に市場をリードする立場になっていますが、任天堂ほどの大企業になると日本のみの売り上げだけでは足りません。やはり、ヨーロッパ市場をどのように改善していくかが最大の課題となります。
3DSの海外市場について
では、その海外市場がどういったモノになっているかというと、以下のような感じ。
- アメリカでのソフトチャートトップ20に、任天堂プラットフォームが5タイトル、3DSタイトルは「New スーパーマリオブラザーズ 2」のみ
- アメリカ市場では良い流れが作れなかった
- アメリカでは、3DS XL(3DS LLの事)と「New スーパーマリオブラザーズ 2」である程度勢いは得たが、その後の伸びは十分ではなかった
- アメリカでのソフト市場全体は23%減となったが、原因としてデジタル配信への移行も影響したが、任天堂プラットフォームでは市場にインパクトを与えるヒットソフトが出せなかった事が要因
- ヨーロッパでは、携帯ハードも11月下旬以降の推移が期待通りにならなかった
- アメリカとヨーロッパの違いは、ニンテンドー3DSがドイツ・フランスで好調に推移した事で既存プラットフォームとして唯一前年を上回る事ができた
- 最も状況が悪いのはイギリスのヒットチャートで、任天堂プラットフォームの存在感がない
- スペインのヒットチャートでは、任天堂プラットフォームのタイトルが11タイトルランクインしていて、イギリスに比べると存在感を出せている
- ドイツのヒットチャートは、任天堂プラットフォームのタイトルが10タイトルあり、その中でも3DSの主要タイトルが上位にあること、Wiiの存在感が大きい
- フランスのヒットチャートは、任天堂プラットフォームのタイトルが11タイトルあり、3DSの主要タイトルが上位であること、Wiiの存在感が大きい事がわかるし、レイトンシリーズやガールズモードなどの売れ行きも好調で、西洋では最も順調に3DSが普及している
- ハードの市場シェアを分析すると、日本の占有率は57%、アメリカが19%、欧州が21%、日米欧が28%となる
- 欧州を国別にすると、ヨーロッパ最大市場のイギリスの状況がよくないが、他の国はハードシェアが高い
流石に最大級の懸案だけあってか、海外市場での分析は細かいものがあります。
ヨーロッパのゲームニュースをみていると大抵話題になるのがイギリス市場です。それはイギリス市場がヨーロッパ最大となるので、ココを制さない事には勝負できません。
ちなみに、3DSはフランスだと順調に普及しているともしていて、フランスにはUBIの本社があるので、ゾンビUなどでも任天堂と良好な関係を築いているのはそういった事が背景にあるのかなぁ? とか、何とも面白そうな妄想ができたりできなかったりします。
Wii Uの現状について
一方でWii Uはどうだったかというと、やはり当初の勢いを失っている結果になっています。
- ヨーロッパは、2012年は各社プラットフォームに盛りあがりが遅く、ピークが低い年末商戦となったが、Wii Uも世界各地の中で最も早く勢いを失った
- Wii Uはベーシックとプレミアムの需給バランスが上手くいかなかった事を除けば販売当初は計画通りだったが、年始以降は勢いを保てていない
- ソフト開発が遅れていて、今年序盤のソフト販売が途切れてしまい、普及のシナリオが一度崩れた
- Wii Uの魅力はジワジワと実感するものであるため、製品の価値を広く伝えられていない状況で、最初に買った客から情報が上手く伝わらず、勢いを保てなかった要因にもなっている
- Wii Uは仕切り直す必要があるが、製造原価に対してすでに踏み込んでいるので値下げは予定していないし、それは3DSの反省を活かすという意味でもある
- Wii Uは現状製品価値をしっかり伝える事ができていない事がはっきりしたので、ソフトが充実する前にそこに取り組むと同時に、Wii Uの価値を伝えられるソフトを充実させる
- 起動や切り替えスピード、初回アップデートの時間などは春・夏の本体更新で改善していく
ここで注目なのは、やはりヨーロッパでは普及が上手くいっていない事と、ソフト販売計画が一度崩れている事です。この2点があるのにも関わらず、3月までに400万台を売り上げる事を目標にしているので、ウルトラC的なモノがあるのかどうかが注目されます。
Wii Uの場合、ヨーロッパで普及が上手くいっていないのも問題ではありますが、それが懸案事項になっているかと言えばそれ以前の問題で、日本を含め全世界的に勢いが失われている事を示唆しています。Wii UはゲームパッドやMiiverseで色々できることがあるとはいえど、やはり基本的にはゲーム専用機です。ゲームパッドやMiiverseに可能性を見出したところで、ソフトがないことには購入を検討するには難しいでしょう。購入を決意させるゲームがいつでてくるのか、が一番求められているところでもあります。
任天堂の経営目標について
流石に営業赤字が2連続ともなると、いくら結果が黒字とはいえど本業が不味いと思われてしまうのは仕方がない事です。と言う事で、来期の目標や展望についても語っています。
- 来期は、現状の為替トレンドを前提(要するに円安傾向)に、営業利益1000億円以上を目指す
- 3DSは逆ざやを解消しているので、海外事業の勢いを取り戻すために必達の目標
- どうぶつの森のダウンロード版は70万本を超えた
- 日本市場では、『ドラゴンクエストVII』『トモダチコレクション 新生活』『モンスターハンター4』『ポケットモンスター X・Y』を主軸タイトルとし、他にも自社、他社から色々展開される予定
- 海外で3DSを売るために、市場を牽引するポテンシャルのある有力ソフトを、自社で積極的に展開することを計画している
- 海外でも、『ファイアーエムブレム』や『ポケモンダンジョン』『ルイージマンション2』『鬼トレ』『LEGO City』など発表済みのモノからそれ以外のタイトルも集中的に出して、3DSを「マリオシリーズを楽しむ携帯ゲーム機」から「多様なソフトが楽しめる携帯ゲーム機」に変える
- ヨーロッパのメーカーは、携帯ゲーム機よりも据え置き機に投資する傾向が強いが、日本では携帯ゲーム機のシェアが高いので、国内の有力タイトルの海外展開を今まで以上に推進する
- レイトンシリーズはヨーロッパだと任天堂が自社で展開していたが、アメリカでも積極的にそういった事例を増やしていく
営業利益1000億円というのは、かなり思い切った目標です。本当に実現できるのかどうかは、3DS次第というのもあるのでしょう。……それでも、かなりな目標だとは思いますが。
ハードを牽引するには、それ相応のソフトが必要になります。そこで国内外問わずのキラータイトルとなれるかどうか、注目があつまるのは「ポケットモンスター X・Y」です。全世界同時発売にした理由は、やはり海外対策も兼ねていたと見る事ができます。
また、海外展開として任天堂がパブリッシャーとして動くというのは珍しい動きです。それだけ海外市場を重視していると言う事でしょう。日本で3DSが携帯ゲーム機市場をリードしている現状においては、国内のタイトルを海外に持っていくビジネススタイルが上手くいくかどうかが注目どころとも言えるでしょう。
今後の取り組みについて
やっと最後の項目ですが、3DSとWii Uのそれぞれの今後は次のようになっています。
- すれ違い通信系の機能強化を予定しているので、海外でも普及させる取り組みに重点を置く
- Wii Uについてはじっくりと普及に取り組み、今年の後半までに大きく状況を変えていきたい
- 今年の後半から来年にかけて、先週放送した「Wii U Direct Nintendo Games」のような自社タイトルを集中的に展開し、ハードを牽引したい
- ソフトメーカーが据え置き機で開発する場合、リスクを取って独占タイトルを作るというのが難しくなっているので、コラボタイトルなど色々な提案をしていこうと進めている
- 例としては、スマブラをバンナムと共同開発したり、アトラスとのコラボだったり、LEGO Cityでワーナー・TTゲームズと組んだり、JUST DANCEみたいなタイトルを日本にカルチャライズしたりする
- さらに、従来のライセンスビジネスという枠組みを超えて、積極的にそういった事を推進していきたい
- Googleの「ストリートビュー」をWii Uで楽むサービス、『Wii Street U powered by Google』は、2月中旬までに配信予定
- 3月のGDC(Game Developers Conference)では、HTML5やJavaScriptなどのウェブ技術でWii Uソフトを開発できる環境や、Unityという多くのユーザーに使われているクロスプラットフォームのゲームエンジンなど、ソフトウェアの作り手を広げる試みについて、いくつかご紹介する予定
- 携帯ゲーム機と据え置き機の開発本部を統合し、お互いの資産を上手く使い合う取り組みを行う
Wii Uのタイトル不足はWii Uダイレクトで発表されたタイトルで解消していくようですが、サードパーティがどれくらい参入するのかが注目どころです。あと、基本的に自社だけの開発では追いつかない現実があるので、そこは他企業と手を組んでやっていくスタイルを押しています。ここらへんで、どれだけサードパーティを取り込めるかも重要になりそうです。やはり、必要なのは他ハードとは違った独占タイトルであるということでしょう。
ついでに、さりげなくWii Uとストリートビューを合わせたサービスが2月中旬に配信予定されているのも気になるところです。まぁ、ゲーマーとしましてはソフトが欲しいわけですが、Wii Uらしい機能と言えばそういうことでしょうし……。
あとは、GDCでHTML5やJSを使ったWii Uソフト開発というのは、ゲームパッドを主軸にした開発ということで、恐らくはスマホやソーシャルゲームに見られる開発環境と似ているような気がしないこともありません。実際、海外ではインディーズが確かな広がりを見せていますし、日本においてその流れはかなり重要となります。色んな情報を公開して幅広いインディーズに参加してもらえば、もっと賑わう事になるとは思うのですが、個人的には今後もチェックしておきたい部分です。
一言でまとめると、来期は任天堂が本気で勝負しに来る年になりそう、という事でしょうか。3DSの海外展開や、Wii Uをどうしていくのか、という点でも改善が必要ですし、何よりタイトルのラインナップを充実していく必要があります。特に、Wii Uは急務でしょう。
任天堂らしい博打のような勝負ではありますが、1年後の結果がどうなっているのかを楽しみにしたいですね!
[情報元:任天堂経営方針説明会 / 第3四半期決算説明会より]
しょぼーんさんとしゃきーんさんのゲーム座談会
:任天堂の経営方針説明会をまとめたらすっげーながくなって、中の人が泣きそうになってたって言うお話です。
:まぁ、長いわな……。
:でも、ちゃんと読んでおくと任天堂が置かれている状況が垣間見えると思う。あと、そのうち質疑応答が出てくるとは思うから、そこらへんも合わせておくとなおいいかも。……頑張ってもらいたいところだねぇ……。
:失意泰然、得意冷然ってやつだな……。
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