連載:気まぐれゲーム雑記 第131回:信用できるビジネスを構築するのは大変、と言う話題
気まぐれゲーム雑記
第131回「信用できるビジネスを構築するのは大変、と言う話題」
信用とは如何に?
基本的にポジティブな意見
Wii Uの発売から1ヶ月半以上が経過し、2月3月のタイトルはほとんどない事も判明しています。
ですが、ニンテンドーダイレクトでいつ発売かはわからないけど作られているタイトルを発表した事で、一定の安心感が出たような……気がしないこともありません。そこらへんの結果は、時間が教えてくれるでしょう。
そんな任天堂ですが、任天堂社長の岩田氏にインタビューした記事が掲載されました。詳しくはこちら。
かなり長い内容ですので、ぱっと読めちゃう人は原文を見た方がいいかもしれません。が、一応まとめると次のような感じです。
- 岩田氏曰く、朝起きたらテレビを付けずにWii UゲームパッドでMiiverseを覗くのが日課
- Wii UはDSの時のように、価値をわかってもらうのに時間がかかる
- DSの時は2年近くかかっているので、短期的なことに一喜一憂しないように心がけている
- Miiverseがきちんと立ち上がるまでは、本気で書き込みを全件見ようと決めている
- 何百人かに1人はお行儀の悪い方もいるが、運営側に通報しようとしてくれる人もいる
- 「ここは守るべき価値がある場所」と認めてもらえるようになれば、今度はMiiverse利用者達に助けてもらえるようになると思っている
- 任天堂がニンテンドーダイレクトなどで情報伝達に執念を燃やす理由は、ゲームに関する情報の集め方は個人差が激しいため
- デジタルコンテンツは、モノの形としてみえないので世の中の人が認めるような相場に相当するものがない
- でも、任天堂のマリオが売れるのは、信用の上に成り立っているから
- あらゆるソフトウェアは、気をつけないと価値がすぐに下がり、デジタルになると製造原価がかからなくなるので、値引き競争になりやすい
- しかし、良質なソフト開発には大きな投資が必要だし、値引き競争が行きすぎるとコンテンツビジネスがうまくできない未来がまっている
- 3DSやWii Uは、ソフトメーカーの要望する課金形態に柔軟に対応できるように作った
- デジタルで商品を供給できるようになったことや、ユーザーからDLCなどで支払いができるようになったと言う話と、射幸心を煽って徹底的にお金をいただくというスタイルの話とはまったく別
- ソーシャルゲーム(ここでは無料と良いながらガチャで最終的に10万程度を支払わせるゲームを指す)のようなゲームビジネスを、岩田氏は一度もやりたいと思った事はない
- 株主から「ソーシャルゲームをやるように努力すべきでは?」と言われたら、長期的な企業価値の維持を求めた場合利益追求に真剣ではないと見る事もできる
- 任天堂が社会に信頼されるようなビジネスをしていきたいし、それは中長期的にみれば利益になると考えているが、それが正しいか否かはユーザーが決める事
- ニンテンドーダイレクトで提供した情報に、ユーザーがワクワクしている反応を見ることは、自分にとって凄くエネルギーになる
- スマホやタブレットの登場でゲーム専用機悲観論が出ているが、スマートフォンで遊ぶ世代に「とびだせ どうぶつの森」は売れた
- ゲーム専用機悲観論を払拭して、早く業績も株価も挙げたいが、悲観しているわけでもないし、負担感が強いわけでもない
- 任天堂前社長山内氏の好きな言葉「失意泰然、得意冷然」が示す通り、一喜一憂せず業績を回復していきたい
ちなみに「失意泰然、得意冷然」というのは、任天堂前社長である山内溥氏の座右の銘で、意味は「運に恵まれない時は、慌てず泰然(落ち着いて動じないさま)に構え努力し、運に恵まれた時は運に感謝して冷然(素っ気ないさま)と努力せよ」という意味です。
というわけで、本日は信用をテーマにアレコレとトークしてみようかと思う次第です。
短期、中期、長期のビジネスとユーザー視点
企業のビジネススタイルは、それぞれ短期的、中期的、長期的な視点に分かれます。
今ゲーム業界の各メーカーさんが求めているのは、短期的なビジネスモデルが主軸になっているでしょう。もちろん、新生FF14やドラクエ10みたいなオンラインは長期的なビジネスモデルですが、そういったものよりもSNS系ゲームでお手軽に開発し、短期で利益を生むモデルが好まれているのが現状です。そこらへんには、ユーザーのゲーム消化速度が昔に比べて上がっているという事と、開発費が高騰しているという現実があります。
ともなれば、上場している企業は株主を説得する材料がないといけませんので、SNS系ゲームをきちんと出しているという企業努力をしないと市場では厳しい判断がされてしまう可能性もあるわけです。
あ、SNS系ゲームでも良いモノがある、という当たり前な話は当然踏まえていますよ?
そういった現実を目の当たりにしていると、ユーザーの視点も短期的なものになりやすく、すぐさま結果を求めるような事になりやすいです。
例えば、未だ苦戦が強いられているけど3月で盛り返せるかどうかが焦点にもなっているVitaがその一例でしょうか。もうダメっぽいと烙印を押す人もいれば、まだ1年だからと構えている人もいます。Vitaは1年経って今の現状になっていますが、DSでも2年近くかかったというのだから、やはり中長期的にハードの推移をみていかなければなりません。まぁ、ちゃんとソフトを多く集めてからある程度の値下げに踏み切れば一気に加速しそうにも思いますが……。
もちろん、一定の時期に明らかな結果を求められるのは仕方がない事です。ビジネスでやっている以上は、ずっとやり続ける事ができる企業体力というのも重要になります。任天堂はその企業体力(ようするに資金)が十分あったわけで、つまり他の企業に比べて長期的ビジネスを最初から挑むことができる企業である、という事になります。もっとも、長期的過ぎてはいけませんし、任天堂は海外への対策をどうするかが最重要課題でもあるので、そこらへんのビジョンは示しておく必要はあるでしょう。……当面は、「ポケモン押し」といったところかもしれません。
どこまで信用すればいいのか?
岩田氏は長期的に物事を見ていて、いわゆる誠実なスタンスを取っているからこそ信用できるか否かをユーザーに委ねる、という選択をしています。そりゃまぁユーザーからすれば、信用できる企業とできない企業なら、できる企業を選びたいと思うのが常でしょう。
とはいえ、結果が出せなかった時の反動が大きいのも、長期的ビジネスのデメリットです。そこらへんを臆せずできるのも、ユーザー相手に信用を得ようと考えている任天堂ならでは、なのかもしれません。……うまくいくかどうかは本当にわかりませんけど。
現状でどのメーカーがどれくらい信用できるのか、というのは、何とも解答に困ってしまうところです。メーカー単位、タイトル単位、クリエイター単位でそれぞれ違うものですし、当然個人個人で変化するものだからでしょう。それでも、「どこが信用できそう」とか、「誰が信用できそう」といった話がでてくるのは、そういった意見が出てくるからです。当然、逆もまた然りです。まぁ、そこらへんはしっかりと真か偽か見定めないといけないわけですが。
ビジネス模様が多様化する中で、ユーザーがどれを信用し、どれを信用しないかというのが重要になってきています。ユーザーはそれを見定める目が必要ですし、メーカーは一層そういった企業努力が必要なのかもしれません。メーカーは信用されなくてもお金を生み出す術があるようですが、長期的にみれば信用できるメーカーになってもらったほうが、いちゲームファンとしてもありがたい限りなのです。そういう志を持ったメーカーさんがどれくらいあって、本当に実行できているのはいくつくらいあるのでしょうね?
しょぼーんさんとしゃきーんさんのゲーム座談会
:信用されるメーカーになるのは大変ダヨネーってお話です。
:任天堂は現状そうなのかはわからんけど、信用されるメーカーになりたいって事だっつー話でOK?
:そうだけど、これは任天堂以外にも言える話だね。例えば、某スクエニは新生FF14で、信頼を回復すると言ったけど、これはつまり信用が地に落ちたとも捉えられるわけ。そういうのがあると、信用されるビジネスって大切だよ? というお話さ。
:まぁ、もとより信用できる何かがなけりゃ、中々お財布の紐を緩めるような時代じゃなくなってるだろうしな……。今後、どれくらい信用できるメーカーが出てくるのかねぇ?
:
:
:
: