連載:気まぐれゲーム雑記 第93回:THQの失敗はプレイヤーの嗜好に変化できなかったから? と言う話題
気まぐれゲーム雑記
第93回「THQの失敗はプレイヤーの嗜好に変化できなかったから? と言う話題」
業界も大変なのです……。
依然として厳しいTHQ
日本にも事業所があった海外のゲームメーカーTHQ。
先日紹介したこちらでも紹介したThe Humble THQ Bundleは、最終的に500万ドルの売上で、88万5000バンドル売れたそうです。500万ドルと言えば、大体4億円。何とも素晴らしい売れ行きとなったのは言うまでもないでしょう。
そんな成功とは裏腹に、いまだ綱渡りのような経営が続くTHQですが、日本でも話題となった「Homefront」を発売したことでも知られています。「Homefront」は、北朝鮮がアメリカを半分くらい占拠しているという設定の近未来が舞台で、それらを解放していくというFPSです。いやはや、設定が設定なだけに日本でも話題を呼びました。
それを開発したのはTHQ傘下のKaos Studio。お名前の通り、中々にぶっ飛んだモノを作ってくれましたが、建前上はTHQがカナダに開発陣を集中させるという名目でスタジオは閉鎖されます。THQの経営危機問題が背景にあるというのは、誰もが想像していたでしょうけど、そのシリーズを受け継ぐ形でHomefront2の製作に取りかかったのが、Crytekでした。
というわけで、今日はCrytekのCEOがTHQの現状にコメントしながらも、開発費の高騰が問題じゃないと考えているらしい、といった話題に触れていこうかと思う次第です。
プレイヤー(ユーザー)の変化と市場の変化
Crytekといえば、「Far Cry」や「Crysis」を作り、特に「CryENGINE 3」を作ったゲームメーカーでも知られています。そこのCEOであるCevat Yerli氏がTHQに対してのインタビューに答えたそうです。詳しくはこちら。
ざっとまとめると、次のような感じになります。
- THQが問題回避してくれるのを願っているし、Homefront 2も事態を好転させる大きな役割を担っている
- THQに限らず、伝統的なパブリッシャーが経営危機に陥るのは、開発費の高騰が原因ではなく、プレイヤーが変化した事が原因だと考えている
- プレイヤー達は、今までのプラットフォームから離れつつあり、パブリッシャーはカバーできていない
- それが新しい市場のためのR&Dコスト(研究開発コスト)に負荷をかけていて、その負荷にたえられない
- だから、伝統的な会社は実績のあるフランチャイズにリソースを集中する
- 結果として、プラットフォームでの大作から革新性が失われて、新しいプラットフォームへの投資が増える
- タブレットやブラウザ市場を理解するためには、今までの組織やノウハウじゃダメ
- 今、この業界はとても厳しい状況に追い詰められている
- プラットフォームは、プレイヤーのスタイルに適応できず、プレイヤーが去ってしまった
Cevat Yerli氏の考えはかなり的確なモノに思います。
ユーザーに変化が見られる中、市場も変化する事を迫られているのがよくわかる内容になっています。
ですが、開発費の部分はちょっとだけ気になるところでして、現時点では高止まりしている開発費も、次世代機となればまた変わってくるような気がしてなりません。
むしろ、現時点でも十分開発費が高すぎるという印象は拭えないモノでしょう。
最近の開発費は高止まりしてるけど……?
ここで、ざっと開発費がどれくらい高いのかを調べてみました。少々古い記事ではありますが、海外サイトにこんなデータがあります。一応、日本で知られているものだけを抜粋してみました。
- GTA4:1億ドル
- グランツーリスモ5(プロローグ含め):8000万ドル
- シェンムー 一章 横須賀:7000万ドル
- Halo 3:5500万ドル
- LA ノワール:5000万ドル
- ファイナルファンタジーXII:4800万ドル
- KillZone 2:4500万ドル
だいたい日本で知られているタイトルはこんな感じでしょうか。
ちなみに、紹介した海外サイトにはメタルギア4の開発費が6000万ドルかかった、とされていますが、これはコナミの小島プロダクションの中の人がツイッターで否定しています。あくまでも、海外のニュースサイトが調べた、参考データにすぎない程度に思っておくのが良いでしょう。
ついでに言えば、シェンムーの7000万ドル(当時価格で70億円)は、本当のことです。こちらのCMが証明してくれます。……懐かしいなぁ。
CEDEC 2012の講演で、ギアーズで知られているEpic社のティムスウィーニー氏は、「次世代機の開発コストは現行機初期の開発コストの3倍になる」と予測しました。ともなれば、やはり次世代機ではある程度開発コストが上がるのは想定されることです。Cevat Yerli氏が述べた事に開発費の上昇が加わると、さらに企業は生き残りを賭けてあらゆる手段を問わなくなるでしょう。
そこらへんを考えれば、プレイヤーの嗜好の変化、というよりもプラットフォームが増えた事による嗜好の多様化と捉えるのが無難なのかもしれません。
いちゲーマーとしては次世代機を楽しみにしたい反面、次世代機の登場によって、ついていけない中小開発メーカーが出てくる事も懸念される今、実に悩ましいところです。技術革新は良い事ですし、どんどん進めてもらいたいとは思いますが、その一方で業界が上手くやっていけるように色々と手を尽くしていく事も大切なのかもしれませんね。
しょぼーんさんとしゃきーんさんのゲーム座談会
:なんか、開発費の高騰とか市場の変化とか業界は厳しいとかそういった話題です。
:いくら高止まりしているとはいえ、今なお高いって印象は拭えないよな。
:まぁね。だからこそ、博打みたいな言われにもなっちゃうんだと思う。ともあれ、スゴイのはドリームキャスト時代のセガは、実にセガらしかった、ということですな。
:……色んな意味で、バブリーだよな……。